法人税申告書の別表二には、「同族会社等の判定に関する明細書」という物々しい名前がついています。「同族会社」と聞くと、家族経営の小さな会社だけの話に思えるかもしれませんが、国税庁の令和6年度分「会社標本調査」では、単体法人の96.6%が特定同族会社または同族会社に分類されています。オーナー社長の会社であれば、ほとんどの場合、同族会社に該当します。
では、同族会社と判定されると何が起こるのでしょうか。「留保金課税」という追加の税金がかかると聞いて不安になる方もいますが、資本金(または出資金)1億円以下の中小企業には原則としてかかりません。
この記事では、同族会社の判定のしかた、該当した場合の税務上の影響、そして留保金課税の仕組みを、国税庁の手引にもとづいて解説します。
まず、判定の全体像を図で示します。同族会社かどうか(判定1)、さらに留保金課税の対象となる特定同族会社かどうか(判定2・判定3)を、別表二・別表三(一)の流れに沿って確認できます。

同族会社とは──上位3株主グループの判定割合が50%超
同族会社とは、株主等の3人以下とその同族関係者について、株式数・出資額、一定の議決権、または持分会社における社員数のいずれかの判定割合が50%を超える会社をいいます(法人税法2条10号)。一般的な株式会社では株式数による判定が中心ですが、種類株式を発行している場合などは議決権による判定も必要です。社員数による判定は、合名会社・合資会社・合同会社(持分会社)で使用します。
ポイントは、株主1人ひとりではなく「株主グループ」で数えることです。株主とその同族関係者をひとまとめにして1グループと数え、持株割合の大きい上位3グループについて、上記いずれかの判定割合が50%を超えるかで判定します。別表二では、株式数等・議決権・社員数の3つの判定欄のうち、最も高い割合を使います。
同族関係者には、おもに次が含まれます(法人税法施行令4条)。
- 株主の親族(配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族)
- 株主と事実上婚姻関係と同様の事情にある者、使用人など特殊な関係の個人
- 株主グループが50%超を支配している法人(子会社など)
以下は、株式数による一般的な判定例です。
→ 社長と配偶者は同一グループ(70%)。1グループだけで50%超のため同族会社です。
→ 上位3グループ合計55%で50%超のため、血縁がなくても同族会社です。
このように判定基準は広く、株主が少数に集中している会社はほぼ該当します。判定は毎期、別表二で行います。株式数等・議決権・社員数による判定割合のうち最も高い割合を別表二の10欄に記載し、その割合が50%以下であれば非同族会社となります。
同族会社に該当すると何が変わるか
「同族会社に該当した」からといって、直ちに税金が増えるわけではありません。ただし、少数の株主が会社を意のままに動かせることから、税負担を不当に減らす行為を防ぐための特別ルールがいくつか適用されます。
① 行為計算の否認(法人税法132条)……同族会社が、通常の経済取引では考えにくい行為・計算によって法人税の負担を不当に減少させたと認められる場合、税務署長はその行為・計算を否認して課税できます。たとえば、経済合理性のない資産の売買や貸付けなどが対象になり得ます。
② みなし役員・使用人兼務役員の制限……同族会社では、登記上の役員でなくても、一定の持株要件を満たして経営に従事している人(オーナーの親族など)が税務上の役員とみなされることがあります(みなし役員。法人税法施行令7条)。また、一定の持株要件を満たす役員は使用人兼務役員になれず(同施行令71条)、使用人分の賞与を損金にする扱いが使えません。役員給与の損金算入ルールと関わる重要な論点です。判定基準の詳細はみなし役員・使用人兼務役員とはで解説しています。
③ 特定同族会社の留保金課税……次で詳しく解説します。
留保金課税とは──対象は「特定同族会社」だけ
留保金課税(特定同族会社の特別税率)は、会社に利益をため込む(留保する)ことで、株主個人への配当課税を先送りすることを防ぐための制度です(法人税法67条)。
対象になるのは、同族会社のなかでも特定同族会社に限られます。特定同族会社とは、大まかにいうと、1つの株主グループについて、株式数等・議決権・社員数のいずれかの判定割合が50%を超える被支配会社です。3グループ合計で判定する同族会社より、さらに支配が集中している会社に絞られています。
なお、判定の基礎となった株主のなかに「被支配会社でない法人」がある場合には、その法人を除外して判定し直すなど、細かい調整があります(法人税法67条1項・2項、法人税法施行令139条の7)。資本金1億円以下で原則除外される法人や清算中の法人などを除き、別表二の「特定同族会社の判定割合」欄を記載します。その17欄が50%を超える場合に、特定同族会社と判定されます。
資本金1億円以下なら原則対象外
ここが中小企業にとって最重要ポイントです。期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社は、原則として特定同族会社から除かれ、留保金課税の対象になりません(法人税法67条1項)。
ただし、資本金1億円以下でも、次のような場合は対象に戻ります(国税庁「特定同族会社の判定フロー」より)。
- 資本金5億円以上の大法人(相互会社・受託法人を含む)による完全支配関係がある場合(完全支配関係のある複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている場合を含む)
- 投資法人・特定目的会社
- 通算グループ内の大通算法人
なお、清算中の法人は特定同族会社から除かれ、留保金課税の対象になりません。
つまり、大企業の100%子会社ではない、独立系のオーナー中小企業であれば、内部留保をためても留保金課税はかからないのが原則です。「利益を残すと二重に課税される」という古いイメージで必要以上に心配する必要はありません(資本金や支配関係の状況が変わる場合はご注意ください)。
中小企業向けの税制上の優遇の全体像は、中小企業の判定と税務上の優遇で解説しています。
留保金課税の計算のあらまし
対象になった場合の計算の骨組みは、次のとおりです(申告書では別表三(一)で計算します)。
税額 = 年3,000万円以下の部分 × 10%
+ 年3,000万円超1億円以下の部分 × 15%
+ 年1億円超の部分 × 20%
特別税率は一つの率を全額に掛けるのではなく、上記のように課税留保金額を3段階に区分する超過累進方式です。なお、事業年度が12か月未満の場合は、3,000万円と1億円の区分額も月数按分します。
① 留保金額……当期の所得等のうち、配当などで社外に出さず社内に留保した金額をベースに、法人税・住民税などを差し引いて計算します。ここでいう留保金額は、別表四で「留保」と区分された金額の単純な合計ではありません。別表四の留保所得金額(留保と社外流出で解説)を基礎として、配当や法人税・住民税などを調整し、別表三(一)で計算します。
② 留保控除額……次の3つのうち最も多い金額が控除されます(法人税法67条5項。計算は別表三(一)付表一)。
- 所得基準額:当期の所得等の金額の40%
- 定額基準額:年2,000万円(事業年度が12か月に満たない場合は月数按分)
- 利益積立金基準額:期末資本金の額の25%相当額から期末利益積立金額(利益積立金額と別表五(一)で解説)を差し引いた金額
③ 特別税率……課税留保金額を3段階に区分し、通常の法人税に追加して課税されます。
| 課税留保金額の区分 | 税率 |
|---|---|
| 年3,000万円以下の部分 | 10% |
| 年3,000万円超〜1億円以下の部分 | 15% |
| 年1億円超の部分 | 20% |
→ 3,000万円 × 10% + 3,000万円 × 15% = 750万円
通常の法人税とは別に、750万円の留保金課税が加算されます。
なお、国税庁の別表三(一)手引には、当期の所得金額が0でも、受取配当等の益金不算入や繰越欠損金の損金算入などがある場合には留保金課税が適用されることがある、という注意書きがあります。該当しうる会社は申告時に確認が必要です。
まとめ
- 同族会社とは、上位3株主グループ(株主+親族などの同族関係者)について、株式数等・議決権・社員数のいずれかの判定割合が50%超となる会社。国税庁の会社標本調査では単体法人の96.6%が該当し、判定は別表二で行う。
- 同族会社に該当しても直ちに税負担は増えないが、行為計算の否認、みなし役員・使用人兼務役員の制限などの特別ルールの適用対象になる。
- 留保金課税の対象は、1株主グループで50%超の「特定同族会社」だけ。しかも資本金または出資金1億円以下の会社は原則対象外(大法人の完全支配下にある場合などを除く)。
- 対象になる場合は、課税留保金額(留保金額−留保控除額)に10%・15%・20%の特別税率で追加課税される(別表三(一))。
根拠・参考(一次情報)
- 国税庁「別表二(同族会社等の判定に関する明細書)」様式・記載要領(令和8年4月1日以後終了事業年度分。株式数等・議決権・社員数の3判定欄、判定割合10欄50%超→同族会社、17欄50%超→特定同族会社)(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2026/pdf/02.pdf - 国税庁「別表三(一)(特定同族会社の留保金額に対する税額の計算等に関する明細書)」様式(令和8年4月1日以後終了事業年度分。年3,000万円以下10%・3,000万円超1億円以下15%・1億円超20%の区分)(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2026/pdf/03(01).pdf - 国税庁「別表三(一)付表一(特定同族会社の留保金額から控除する留保控除額の計算に関する明細書)」様式(令和8年4月1日以後終了事業年度分。所得基準額40%・定額基準額2,000万円・積立金基準額のいずれか多い金額)(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/shinkoku/itiran2026/pdf/03(01)-f1.pdf - 国税庁「法人税申告書の記載の手引・別表三(一)」(当期所得0でも受取配当等の益金不算入・繰越欠損金の損金算入等があれば適用があり得る注意)(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2022/pdf/02-04.pdf - 国税庁「令和6年度分 会社標本調査 -調査結果報告-」(令和8年3月。単体法人の96.6%が特定同族会社または同族会社)(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/kaishahyohon2024/pdf/R06.pdf - 根拠法令:法人税法2条10号(同族会社の定義)・67条(特定同族会社の特別税率)・132条(同族会社等の行為又は計算の否認)、法人税法施行令4条(同族関係者の範囲)・7条(役員の範囲)・71条(使用人兼務役員とされない役員)・139条の7(被支配会社)(e-Gov法令検索で参照可能)
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.12 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

