貸倒引当金とは|中小法人の繰入限度額と法定繰入率をわかりやすく

貸倒引当金とは 中小法人の繰入限度額と法定繰入率 経費・損金
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

売掛金や受取手形は、取引先の倒産などで回収できなくなるリスクがあります。まだ貸倒れが確定していなくても、将来の貸倒れに備えて決算であらかじめ費用として見積計上するのが貸倒引当金です。

ただし、税務上は「見積もった分をいくらでも損金にできる」わけではありません。損金にできる法人が限られているうえ、繰入限度額という上限が決められています。この記事では、貸倒引当金を損金にできる法人、一括評価と個別評価の違い、中小法人の繰入限度額の計算(実績繰入率・法定繰入率)を、国税庁の一次情報にもとづいて解説します。

免責: 本記事は記載時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。適用要件や率は個別事情・改正で変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。

貸倒引当金とは

貸倒引当金は、期末に保有する売掛金・貸付金などの金銭債権について、将来の回収不能見込額を費用(貸倒引当金繰入額)として計上するものです。貸倒引当金は、賞与引当金などの負債性引当金とは異なり、債権の評価性引当金であり、貸借対照表では原則として対象となる債権から貸倒引当金を控除する形で表示します。期末時点における債権の回収不能見込額を、その期の費用に反映する考え方です。

会計上は幅広く引当金を計上できますが、税務上損金にできる金額には限度があります。会計上の繰入額が税務上の繰入限度額を超える部分は、申告で加算(損金不算入)します。

損金算入できる法人(中小法人等に限定)

かつては多くの法人が貸倒引当金を損金にできましたが、平成23年度の税制改正で対象が大きく絞られました。この改正により、貸倒引当金の繰入額を損金算入できるのは、原則として次のような法人に限られます(国税庁 No.5501)。一般の資本金1億円超の法人については、経過措置(激変緩和措置)を経て損金算入の対象外となりました。

  • 中小法人等(期末の資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人など。ただし、資本金5億円以上の大法人などに完全支配されている法人や、大通算法人を除く)
  • 公益法人等・協同組合等・人格のない社団等
  • 銀行・保険会社その他これらに準ずる法人
  • 金融に関する取引に係る金銭債権を有する一定の法人

つまり、資本金の額または出資金の額が1億円を超える普通法人は、銀行・保険会社等の一定の法人を除き、原則として貸倒引当金の繰入額を損金算入できません。自社が中小法人等に当たるかどうかが、まず確認すべきポイントになります。

貸倒引当金の計算フロー

損金算入までの流れは、次の4ステップで整理できます。

個別評価と一括評価

貸倒引当金の繰入限度額は、金銭債権を個別評価金銭債権一括評価金銭債権に区分して計算します(No.5501)。

個別評価金銭債権は、取引先の会社更生や民事再生、長期の弁済猶予など、個別に回収不能のおそれがある債権です。その状況に応じて、取立不能見込額を繰入限度額として計算します。

一括評価金銭債権は、個別評価の対象を除いた通常の売掛金・受取手形・貸付金などをまとめて評価するものです(No.5500)。なお、完全支配関係のある他の法人に対して有する金銭債権など、貸倒引当金の対象から除外される債権もあります。以下では、多くの中小企業が使う一括評価の繰入限度額を説明します。

一括評価の繰入限度額(実績繰入率と法定繰入率)

一括評価金銭債権の繰入限度額は、実績繰入率による原則計算と、中小法人等向けの法定繰入率による特例計算のいずれかを選べます(No.5501)。

実績繰入率(原則)は、過去3年間の貸倒損失の発生額をもとに求めた繰入率(貸倒実績率)を、期末の一括評価金銭債権の帳簿価額に掛けて計算します。

繰入限度額 = 期末の一括評価金銭債権の帳簿価額の合計額 × 貸倒実績率

法定繰入率(中小法人等の特例)は、実績繰入率に代えて、業種ごとに定められた率を使う方法で、中小法人・公益法人等・協同組合等・人格のない社団等が選択できます。ただし、中小法人については、その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える適用除外事業者などは対象外です。法定繰入率による場合は、一括評価金銭債権の額から実質的に債権とみられないものの額を除いたうえで法定繰入率を掛けます。

業種別の法定繰入率は次のとおりです(No.5501、令和3年4月1日以後に開始する事業年度)。

業種 法定繰入率
卸売業・小売業(飲食店業・料理店業を含み、割賦販売小売業を除く) 1,000分の10
製造業(電気・ガス・熱供給・水道・修理業を含む) 1,000分の8
金融業・保険業 1,000分の3
割賦販売小売業ならびに包括信用購入あっせん業・個別信用購入あっせん業 1,000分の7
その他の事業 1,000分の6

なお、複数の業種を営む場合は、業種別に分けて計算するのではなく、原則として主たる事業の法定繰入率を使用します。また、割賦販売小売業等の率は、令和3年4月1日前に開始する事業年度は1,000分の13でした。

法定繰入率による計算例(その他の事業を営む中小法人)

一括評価金銭債権が2,000万円、同一の取引先に対する買掛金など「実質的に債権とみられないもの」が300万円である場合、法定繰入率(その他の事業=1,000分の6)による繰入限度額は次のとおりです。

(2,000万円 − 300万円)× 6/1,000 = 10万2,000円

「実質的に債権とみられないもの」には、同じ取引先に対する売掛金と買掛金がある場合の買掛金相当額などが含まれ、一括評価金銭債権の額から控除します。

実務では、実績繰入率と法定繰入率のうち繰入限度額が大きくなる(=より多く損金にできる)方を選ぶのが一般的です。ただしこれは永久的な節税ではなく、後述のとおり課税を将来に繰り延べる効果を持つ制度である点に注意してください。

損金算入には決算での計上が必要

貸倒引当金は、繰入限度額を申告書上で減算するだけではなく、原則として決算で貸倒引当金繰入額を費用計上する(損金経理する)必要があります。国税庁の別表十一(一の二)の記載要領でも、当期繰入額は「損金経理により繰り入れた金額」とされています。

また、当期に損金算入した貸倒引当金は、翌事業年度に益金算入されます(洗替え)。このため貸倒引当金は、基本的には税負担をなくすものではなく、課税を将来に繰り延べる効果を持つ制度です。

まとめ

  • 貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えて決算で見積計上する引当金。税務上の損金算入には繰入限度額(上限)がある。
  • 損金算入できるのは、原則として中小法人等・銀行等・金融取引に係る金銭債権を有する一定の法人。平成23年度税制改正で対象が限定され、一般の資本金1億円超の法人は経過措置を経て損金算入の対象外となった。
  • 繰入限度額は個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に区分して計算する。
  • 一括評価は実績繰入率(原則)と法定繰入率(中小法人等の特例)を選択でき、有利な方を選ぶのが一般的。
  • 法定繰入率は業種別(卸売小売10・製造8・金融保険3・割賦販売小売等7・その他6/千分率、令和3年4月以後)。複数業種は原則として主たる事業の率で計算する。
  • 損金算入には原則として決算での費用計上(損金経理)が必要。当期に損金算入した貸倒引当金は翌期に益金算入され、基本的には課税を将来に繰り延べる制度である。

根拠・参考(一次情報)

  • 国税庁タックスアンサー No.5501「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定」(令和7年4月1日現在法令等。適用法人・実績繰入率・法定繰入率・業種別の率)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5501.htm
  • 国税庁タックスアンサー No.5500「一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の対象となる金銭債権の範囲」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5500.htm
  • 根拠法令:法人税法52条(貸倒引当金)・66条、法人税法施行令96条、租税特別措置法57条の9(中小企業者等の貸倒引当金の特例)、租税特別措置法施行令33条の7ほか(e-Gov法令検索で確認)
監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.12 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。
タイトルとURLをコピーしました