法人税申告書の中でも、別表五(一)は「わかりにくい」と言われる代表格です。正式名称は「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」。名前が長く、欄も多く、はじめて見ると何を計算しているのか掴みにくい表です。
しかし、この表がやっていることは、突き詰めれば会社の「税務上の純資産」を管理することです。そして、その中心にあるのが利益積立金額という概念です。別表四で学んだ「留保」がここに積み上がっていく、と考えると、別表四と別表五(一)のつながりが見えてきます。この記事では、利益積立金額と別表五(一)のしくみを、国税庁の様式にもとづいて解説します。
免責: 本記事は記載時点の法令・様式に基づく一般的な解説です。組織再編など特殊な取引の取扱いは異なります。個別の判断は税理士にご相談ください。
別表五(一)とは
別表五(一)は、利益積立金額と資本金等の額という、税務上の2つの純資産を計算する明細書です。利益積立金額は法人税法2条18号・法人税法施行令9条に定義されています。
会社の純資産(貸借対照表の純資産)は、大きく分けると株主が出資した部分と会社が稼いで貯めた部分からなります。税務でもこの考え方に対応して、出資部分を資本金等の額、稼いで貯めた部分を利益積立金額として管理します。別表五(一)は、上段で利益積立金額を、下段で資本金等の額を計算する構成になっています。この記事では、主に上段の利益積立金額を扱います。
利益積立金額とは
利益積立金額とは、ざっくり言えば、過去の各事業年度の所得のうち、配当などで社外に出さずに会社に留保してきた金額の累計です。税務上の「内部留保」にあたるもので、会計上の利益剰余金に近い性格を持ちますが、税務調整(留保項目)の分だけ会計とズレるのが特徴です。
たとえば、減価償却超過額のように、会計上は費用処理されているものの、税務上は損金算入が認められず所得に加算される留保項目があると、その分だけ税務上の利益積立金額は会計上の利益剰余金とズレます。この会計と税務のズレを積み上げて管理しているのが利益積立金額であり、別表五(一)なのです。
なお、資本金等の額(株主の出資部分。法人税法2条16号・施行令8条)は利益積立金額とは別のものです。両者を混同しないよう注意しましょう。
別表四の「留保」が別表五(一)に積み上がる
別表四で加算・減算した項目のうち、「留保」に区分したものが、別表五(一)の利益積立金額を動かします。国税庁の記載要領でも、別表五(一)の「当期の増減」には、原則として別表四の「減算」の「留保②」の金額を「減②」へ、「加算」の「留保②」の金額を「増③」へ記載するとされています。
- 別表四の加算・留保 → 別表五(一)の利益積立金額を増やす(「当期の増減」の増③へ)
- 別表四の減算・留保 → 別表五(一)の利益積立金額を減らす(「当期の増減」の減②へ)
- 別表四の社外流出 → 別表五(一)の利益積立金額とは連動しない
つまり、別表四で計算した「税務上、会社に残った利益(留保)」が、別表五(一)にそのまま引き継がれて積み上がっていく、という関係です。社外流出は会社に残らないので、ここには反映されません。実際、国税庁の別表四チェックポイントにも「『留保②』の各欄の金額が、別表五(一)の『当期の増減②、③』欄に移記されていますか」という確認項目が置かれています。
ただし、別表五(一)には、剰余金の配当、納税充当金、未納法人税等のように、別表四の留保欄から直接転記するものではなく、別表五(一)側で別途記載する増減もあります。
期首①から期末④までの流れ
別表五(一)の各項目には、次の欄があります。
- 期首現在利益積立金額①……その事業年度のはじめの残高。前期の別表五(一)の「差引翌期首現在利益積立金額④」を移記します。
- 当期の増減(減②・増③)……当期に別表四の留保などで増減した金額。留保の減算(認容など)は減②へ、留保の加算は増③へ入ります。
- 差引翌期首現在利益積立金額④……①に当期の増減を加減した期末の残高。これが翌期の①になります。
このように、前期の期末(④)が当期の期首(①)へと連続してつながっていくため、毎期の別表五(一)は過去からの積み重ねになっています。期首①が前期の④と一致しているかは、最初に確認すべきチェックポイントです(国税庁の記載要領でも冒頭のチェックポイントに挙げられています)。
別表四との検算式
別表四と別表五(一)が正しく連動しているかは、国税庁の様式に示された検算式で確かめられます。組織再編などの特殊項目がない通常のケースでは、次の式が成り立ちます(欄番号は令和の別表様式によります)。
別表四「留保所得金額(52②)」
+ 別表五(一)「期首現在利益積立金額(31①)」
− 当期の未納法人税等(別表五(一)の27・29・30の③の合計)
± 別表五(一)の28③
= 別表五(一)「差引翌期首現在利益積立金額(31④)」
この式が合っていれば、別表四の留保と別表五(一)の利益積立金額の動きが整合していると確認できます。合わないときは、留保・社外流出の区分ミスや転記もれ、留保②から別表五(一)の増減②③への移記もれなどを疑います。なお、適格合併・非適格合併による資産等の移転など、施行令9条各号の特殊項目がある場合はこの検算式と一致しなくなる点に注意してください。また、欄番号(52②・31①など)は申告書様式の改定で変わることがあるため、その年分の別表で確認してください。
別表五(一)は何の役に立つのか
- 会計簿価と税務簿価の差の管理……減価償却超過額など、会計と税務で資産・負債の価額がズレている分は、別表五(一)に記録され、翌期以降の認容(減算)の基礎になります。
- 税効果会計の一時差異の把握……将来解消する差異の残高を追う手がかりになります。
- みなし配当・清算などの計算基礎……資本金等の額と利益積立金額の区分は、自己株式の取得や解散・清算の際の課税計算のベースになります。
中小企業の日常では細部まで意識しないこともありますが、「会計と税務の純資産の差を積み上げて管理する表」と捉えておくと、別表五(一)の役割が理解しやすくなります。
まとめ
- 別表五(一)は、税務上の純資産である利益積立金額(法法2条18号・法令9条)と資本金等の額を計算する明細書。
- 利益積立金額は、過去の所得のうち社外に出さず会社に留保してきた金額の累計。会計の利益剰余金と税務調整(留保)の分だけズレる。
- 別表四の加算・留保は利益積立金額を増やし(増③)、減算・留保は減らす(減②)。社外流出は連動しない。
- 期首①(前期の④を移記)+当期の増減=期末④、と連続して積み上がる。
- 別表四と別表五(一)は検算式で整合を確認できる(別表四52②+別表五(一)31①−未納法人税等の③±28③=31④)。
根拠・参考(一次情報)
- 国税庁「別表五(一)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)」チェックポイント・記載要領(利益積立金額=法第2条第18号・令第9条/別表四の留保②が増③・減②に連動/期首①=前期の④を移記/検算式)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2022/pdf/02-07.pdf - 国税庁「法人税申告書の記載の手引・別表四(所得の金額の計算に関する明細書)」(留保②が別表五(一)の増減②③へ移記/所得金額52②)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/hojin/aramashi2022/pdf/02-06.pdf - 根拠法令:法人税法2条18号(利益積立金額の定義)・16号(資本金等の額)、法人税法施行令9条(利益積立金額)・8条(資本金等の額)ほか(e-Gov法令検索で確認)
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.06 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者
本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

