事業年度(決算期)の決め方は?変更手続きまで税理士がわかりやすく解説

事業年度(決算期)の決め方 法人税の基礎
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

会社を作るとき、意外と迷うのが「決算月をいつにするか」です。3月決算の会社が多いイメージがありますが、実は事業年度(決算期)は会社が自由に決められます。通常は1年以内であれば、何月締めにしてもかまいません。

決算月をどこに置くかは、申告や納税の時期、資金繰り、事務負担、さらには消費税の免税期間にまで影響します。この記事では、決算期の決め方の考え方を3つの視点で整理し、あとから決算月を変えるときの手続き(株主総会の特別決議と異動届出書)、そして変更したときに生じる「短い事業年度」の注意点までを解説します。

免責: 本記事は記載時点の法令にもとづく一般的な解説です。消費税の取扱いや自治体への届出の細部は個別事情で異なります。自社の判断は税理士にご相談ください。

事業年度とは──通常は「1年以内」の会計期間

事業年度とは、会社が業績を計算し、決算・申告を行うための区切りとなる会計期間のことです。事業年度の最後の日が決算日(決算期)で、たとえば「3月31日」を決算日にすれば3月決算の会社になります。

会社の事業年度は、多くの会社では定款に定めており、通常は1年以内で設定します。「4月1日から翌年3月31日まで」のように1年で区切るのが一般的ですが、1月1日〜12月31日でも、7月1日〜翌年6月30日でも自由に決められます。なお、決算期を変更した後の最初の会計期間は、会社法上、最長1年6か月となる場合があります。ただし法人税では、定款等に定めた会計期間が1年を超えるときは、その開始日から1年ごとに区切った各期間がそれぞれ一つの事業年度になります(法人税法13条)。

日本では3月決算や12月決算が多いものの、これは慣習や親会社・官公庁に合わせているだけで、法律で決まっているわけではありません。自社の都合に合わせて決算月を選べるのが原則です。

実務での一例決算日は本当に自由で、実際に「覚えやすいから」と社長ご自身の誕生日を決算日にした会社もありました。もちろん税務上はまったく問題ありません。もっとも、以下で見るように、繁忙期や資金繰り・消費税なども踏まえて決めるのが実務では安心です。

なお、設立して最初の事業年度(第1期)は、設立日から最初の決算日までとなるため、多くの場合1年未満になります。たとえば10月1日設立で3月決算にすると、第1期は6か月間です。

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事業年度の区切りと設立第1期のイメージ図
図1:事業年度の区切りと、設立第1期は1年未満になりやすいこと(10月設立・3月決算の例)

決算期の決め方①:繁忙期を避け、在庫の少ない月にする

決算月には、棚卸し(在庫の実地確認)や決算作業、申告書の作成といった事務作業が集中します。そのため、本業が忙しい時期と決算作業が重ならないように決算月を選ぶのが基本です。

たとえば、年末年始やお盆に売上が集中する業種では、その直後を決算月にすると繁忙期と決算が重なって大変です。逆に、売上が落ち着き、在庫が少なくなる月を決算月にすると、棚卸しの手間も減り、決算作業に集中できます。

小売業や製造業のように在庫を多く持つ会社では、「在庫が最も少なくなる月の月末」を決算日にするのが、棚卸しの負担を軽くする一つの目安です。

決算期の決め方②:資金繰り(納税は決算後2か月)と季節性

法人税や消費税、地方税は、原則として事業年度が終わってから2か月以内に申告・納付します。つまり、決算月の2か月後に、まとまった納税資金が必要になるということです。

そのため、「利益が出やすい時期の直後」を決算月にすると、決算で大きな利益(=税額)が確定した2か月後に納税が来て、資金繰りが苦しくなることがあります。納税の時期に手元資金の余裕がある月を決算後2か月に迎えられるよう、季節的な入金・支出のリズムを踏まえて決算月を選ぶと安心です。

また、決算月を売上の変動が大きい月にすると、その年の着地(利益)が読みにくく、決算対策(節税や納税予測)が立てづらくなります。業績が比較的読みやすい月を決算月にしておくと、期末の意思決定がしやすくなります。

決算期の決め方③:設立1期目と消費税の免税期間

新しく設立した会社は、一定の要件を満たすと設立1期目・2期目の消費税が免税になる場合があります。これは、消費税の納税義務が原則として「基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうか」で判定され、設立初年度は基準期間そのものが存在しないためです。

この免税をできるだけ長く受けたい場合、設立第1期をなるべく長く(1年に近く)とるという考え方があります。たとえば10月に設立するなら、決算月を9月にすると第1期を約1年確保できますが、11月決算にすると第1期が約2か月で終わってしまい、免税のメリットを十分に活かせません。

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設立1期を長くとると消費税の免税期間を活かしやすいことを示す比較図
図2:設立第1期を長くとると消費税の免税期間を活かしやすい(10月設立の例)

ただし、次のような場合は設立初年度から課税事業者となり、この免税は受けられません(詳しくは会社設立後の税務届出の記事で解説しています)。

  • 事業年度開始日の資本金が1,000万円以上の場合
  • 特定新規設立法人(大規模な会社などに支配されて設立された法人)に該当する場合
  • インボイス発行事業者の登録を受ける場合……登録日以後は課税事業者となります(設立時から登録を受ける場合は、第1期の当初から免税を受けられません)

なお、設立2期目については、上記に加えて「特定期間」(前事業年度開始から6か月間)の課税売上高などが一定額を超えると課税事業者となる場合があります。ただし、設立第1期が7か月以下の場合は、原則として第2期の判定に用いる特定期間が生じません。一方、第1期を長くとった場合は、第2期について特定期間の課税売上高または給与等支払額による判定が必要になることがあります。

免税期間だけを優先して決算月を決めると、①②で述べた事務負担や資金繰りの都合と合わないこともあります。消費税の免税は「あくまで判断材料の一つ」として、総合的に決めるのがおすすめです。

決算期はあとから変更できる|株式会社で定款に事業年度を定めている場合

一度決めた決算月は、あとから変更することもできます。多くの株式会社では、事業年度を定款に定めています。その場合、決算期を変更するには、原則として株主総会の特別決議による定款変更が必要です。なお、合同会社など株式会社以外の法人では、定款変更の手続きが異なります。手順の基本は次のとおりです。

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決算期を変更する手続きの流れ図
図3:決算期変更の手続き(株主総会の特別決議 → 異動届出書の提出。登記は不要)
  1. 株主総会の特別決議で定款を変更する……事業年度を定款に定めている場合、変更するには株主総会の特別決議(原則として、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成。定足数は定款で別段の定めがあり得ます)が必要です。決議の内容は株主総会議事録に残します。
  2. 税務署・都道府県・市区町村へ異動届出書を提出する……事業年度を変更したら、法人税については所轄税務署へ、地方税については原則として都道府県と市区町村へ異動届出書を提出します。国税の異動届出書には原則として添付書類はありません(提出は異動後速やかに)が、内容確認のため定款等の写しを求められる場合があります。ただし、東京23区など取扱いが異なる地域や、複数の自治体に事務所等がある法人もあるため、具体的な提出先・提出期限・添付書類は各自治体に確認してください。

ポイントは、事業年度は登記事項ではないため、法務局での登記変更は不要という点です。定款変更の決議と、税務署等への届出だけで手続きが完了します。

決算月を変える理由としては、「親会社・グループ会社と決算期を統一したい」「繁忙期や棚卸しの時期を避けたい」「資金繰りや社内の予算管理サイクルに合わせたい」などがあります。

決算日を前倒しすると「短い事業年度」が生じる

決算日を前倒しして決算期を変更すると、変更前の期末の翌日から新しい決算日までの1年未満の期間が、独立した一つの事業年度になります。この短い期間についても、改めて決算・申告が必要です。

一方、決算日を後ろ倒しして変更後の会計期間が1年を超える場合、会社法上は変更後最初の会計期間を最長1年6か月とすることがあります(会社計算規則59条2項)。ただし、法人税上は開始日から1年ごとに区切られ、最後に残る1年未満の期間も別の事業年度として申告します。

たとえば3月決算の会社が「12月決算に変えたい」と考えた場合、4月1日〜12月31日までの9か月間が一つの事業年度になり、この期間について決算・申告を行います。

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3月決算から12月決算に変更すると9か月の短い事業年度が生じることを示す図
図4:決算期変更で生じる「短い事業年度」(3月決算→12月決算の例)と月数按分の注意点

なお、法人税法14条は、解散・合併、公益法人等の収益事業の開始、グループ通算制度への加入・離脱など、一定の事実が生じた場合に事業年度を途中で区切る「事業年度の特例」を定めています。決算期変更で生じる上記の短い期間は、これとは別に、定款等で会計期間を変更した結果として生じる通常の(短い)事業年度です。いずれの場合も、1年未満の事業年度が生じる点では共通し、次のような注意が必要です。

  • 申告・納税の回数が一時的に増える……短い期の決算と申告が別途発生します。
  • 月数按分される項目がある……交際費の定額控除限度額(年800万円)や、法人住民税の均等割、中小企業の軽減税率が適用される所得の枠(年800万円)などは、事業年度の月数に応じて按分されます。決算期変更の年は、これらが通常より小さくなる点に注意しましょう。

このほか、減価償却費、少額減価償却資産の年間限度額(合計300万円)、寄附金の損金算入限度額などにも、短期事業年度による月数調整が生じる場合があります。決算期の変更は手続き自体はシンプルですが、税額計算に細かい影響が出るため、変更前に税理士に相談して影響を確認しておくと安心です。

まとめ

  • 事業年度(決算期)は会社が自由に決められ、通常は1年以内であれば何月締めでもよい。法人税上は会計期間が1年を超える場合、開始日から1年ごとに区切る(法人税法13条)。
  • 決め方の視点は、①繁忙期を避け在庫の少ない月にする、②納税(決算後2か月)の資金繰りと季節性、③設立1期目の消費税免税期間を長くとる、の3つが基本。
  • あとからの変更は(株式会社で定款に定めている場合)、株主総会の特別決議で定款変更+税務署・自治体へ異動届出書。登記は不要。
  • 変更した年は短い事業年度が生じ、均等割や軽減税率・交際費の定額控除の枠などが月数按分される点に注意。

根拠・参考(一次情報)

  • 法人税法13条・14条(事業年度の意義・事業年度の特例)|e-Gov法令検索
  • 会社法309条2項(特別決議)・466条(定款の変更)|e-Gov法令検索
  • 会社計算規則59条2項(事業年度末日の変更後、最初の事業年度は最長1年6か月)|e-Gov法令検索「会社計算規則」
  • 国税庁 法令解釈通達「1 事業年度」|nta.go.jp
  • 国税庁 タックスアンサー No.6501「納税義務の免除」|nta.go.jp
  • 国税庁 タックスアンサー No.6503「基準期間がない法人の納税義務の免除の特例」|nta.go.jp
  • 国税庁 タックスアンサー No.6531「新規開業又は法人の新規設立のとき」|nta.go.jp
  • 国税庁 C1-8「異動事項に関する届出」|nta.go.jp

監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報

本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。

最終更新日:2026.07.17 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

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