法人の実効税率とは?表面税率との違いと計算のしくみを解説

法人の実効税率と表面税率の違いを解説するアイキャッチ画像 法人税の基礎
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

「法人税率は23.2%と聞いたのに、ニュースでは『日本の法人実効税率は約30%』と言われる。どちらが本当?」──答えは「どちらも本当」です。23.2%は法人税(国税)だけの税率で、会社の利益には、このほかに地方法人税・法人住民税・法人事業税などがかかります。これらを合わせて「利益に対して実際に何%の負担になるか」を示すのが実効税率です。

実効税率を知っておくと、「利益が1,000万円出たら税金はいくらか」というざっくりした資金繰りの見積りや、設備投資・節税策の効果測定ができるようになります。

この記事では、実効税率の意味、税率を単純に足し算した「表面税率」との違い、計算のしくみ、そして中小企業の実際の目安を、財務省・国税庁・総務省の一次情報にもとづいて解説します。

免責: 本記事は記載時点の法令・標準税率に基づく一般的な解説です。住民税・事業税は自治体の超過課税により税率が異なる場合があります。自社の正確な税負担は税理士にご相談ください。

実効税率とは──「利益に対して実際に何%か」の目安

実効税率(法定実効税率)とは、法人の所得(利益)に対してかかる各種の税金を合計し、所得に対する実質的な負担割合を1つの率で表したものです。対象になるのは、所得に比例してかかる次の税金です。

税金 課税主体 税率(標準・参照 令和7年4月)
法人税 23.2%(中小法人の年800万円以下は15%)※国税庁No.5759
地方法人税 法人税額 × 10.3%
法人住民税(法人税割) 都道府県・市町村 法人税額 × 7.0%(都道府県1.0%+市町村6.0%)
法人事業税(所得割) 都道府県 所得 × 3.5%〜7.0%(外形標準課税の対象外の普通法人)
特別法人事業税 国(都道府県が賦課徴収) 基準法人所得割額 × 37%(外形標準課税の対象法人は260%)

一方、所得に比例しない法人住民税の均等割(赤字でもかかる定額の税金)や消費税は、実効税率には含めません。

表面税率との違い──事業税が損金になるから低くなる

上の表の税率を所得ベースに直して単純に足し算した率を表面税率と呼ぶことがあります。しかし、実際の負担率(実効税率)は表面税率より低くなります。

理由は、法人事業税と特別法人事業税が、申告書を提出した事業年度(原則として翌期)の損金になるからです。事業税は申告納税方式のため、原則としてその申告をした事業年度(通常は翌期)に損金となります。事業税を払うとその分だけ翌期の所得が減り、翌期の税金が少なくなるため、長期的にならすと実質負担は表面税率より軽くなります。

この「事業税の損金算入」を織り込んだのが法定実効税率で、次の算式で計算します。

法定実効税率 ={法人税率 ×(1 + 地方法人税率 + 住民税率)+ 事業税率等}÷(1 + 事業税率等)

※事業税率等=法人事業税(所得割)の税率+特別法人事業税の分

日本の法定実効税率は29.74%(標準税率ベースの大法人)

財務省の公表資料によると、国・地方を合わせた日本の法人実効税率は、平成28年度改正で20%台となり、平成30年度以降は29.74%(資本金1億円超の大法人・標準税率ベース)です(財務省「法人課税に関する基本的な資料」/参照 2026.07)。

推移は、平成26年度34.62% → 27年度32.11% → 28・29年度29.97% → 30年度以降29.74%と、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」法人税改革で段階的に下がってきました。

なお、財務省資料には、防衛特別法人税の課税対象となる法人に該当する場合の法人実効税率は30.64%となる旨が明記されています(令和7年度改正)。防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用され、法人税額(基準法人税額)から年500万円の基礎控除を差し引いた額に4%を乗じる国税です。基礎控除があるため、基準法人税額が年500万円以下の法人では、防衛特別法人税の税額が生じないケースが多いと考えられます。詳細は防衛特別法人税の解説記事をご覧ください。

中小企業の実効税率の目安(作例)

資本金1億円以下の中小法人は、法人税の軽減税率(年800万円以下の所得に15%)と事業税の軽減税率があるため、実効税率は所得の水準によって変わります。標準税率ベースの目安は次のとおりです(作例。実際の率は所在自治体の税率・所得区分により変動します)。

  • 所得のうち年400万円以下の部分:法人税15%・事業税3.5%ベースで、実効税率は約21.4%
  • 所得のうち年400万円超800万円以下の部分:法人税15%・事業税5.3%ベースで、約23.2%
計算:{15% ×(1+10.3%+7.0%)+ 5.3% + 5.3%×37%}÷(1+5.3%+5.3%×37%)≒ 23.2%
  • 所得のうち年800万円を超える部分:法人税23.2%・事業税7.0%ベースで、約33.6%
計算:{23.2% ×(1+10.3%+7.0%)+ 7.0% + 7.0%×37%}÷(1+7.0%+7.0%×37%)≒ 33.6%
  • ざっくりした目安:中小企業の税負担は「利益の約3割前後。ただし利益800万円までは2割強」と覚えておくと資金繰りの見積りに便利です。

中小法人は所得800万円以下の部分に軽減税率があるため、所得が比較的小さい段階では実効税率が低くなります。一方、年800万円を超える部分だけを見ると、大法人の法定実効税率(29.74%)より高くなることがあります。ただし、大法人は外形標準課税(事業税の所得割が低い代わりに付加価値割・資本割がかかる)の対象であるため、率だけで単純に比較することはできません。

注意: 上記は総務省の標準税率ベースです。東京都をはじめ超過課税を行う自治体では、住民税・事業税の税率が標準税率より高くなり、実効税率もその分上がります。正確な率は自社の所在自治体の税率で計算してください。

実効税率を使う場面と注意点

  • 資金繰り・納税予測……「税引前利益 × 実効税率」でおおよその納税額を見積もれます。ただし均等割(赤字でも年7万円〜)は別途かかります。
  • 節税策・設備投資の効果測定……「損金が100万円増えると税金が約33万円減る」のように、実効税率は意思決定の物差しになります。
  • 税効果会計……会計上の繰延税金資産・負債の計算にも法定実効税率を使います(上場企業や会計監査を受ける会社向けの論点)。
  • 含まれないものに注意……均等割・消費税・源泉所得税は実効税率に含まれません。また、繰越欠損金や税額控除があると実際の負担率は法定実効税率から乖離します。

まとめ

  • 実効税率=法人税・地方法人税・住民税・事業税等を合わせた、所得に対する実質負担率。
  • 事業税・特別法人事業税が損金になるため、税率の単純合計(表面税率)より低くなる。
  • 標準税率ベースの大法人で29.74%(平成30年度以降・財務省公表)。防衛特別法人税(令和8年4月1日以後開始事業年度から適用)の対象法人は30.64%
  • 中小企業の目安は、所得400万円以下部分で約21.4%、400万円超800万円以下部分で約23.2%、800万円超部分で約33.6%(標準税率・作例)。ざっくり「利益の約3割」。
  • 超過課税・均等割・繰越欠損金などで実際の負担は変わる。正確な計算は税理士に相談を。

根拠・参考(一次情報)

監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報

本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。

最終更新日:<YYYY.MM.DD> 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

タイトルとURLをコピーしました