みなし役員・使用人兼務役員とは?判定基準と給与の税務を解説

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税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

「妻は役員にしていないから、賞与を自由に払える」「取締役営業部長だから、賞与の一部は使用人分として経費にできるはず」──役員給与の相談で、こうした思い込みによる失敗は少なくありません。

法人税法上の「役員」は、登記されている役員よりも範囲が広いのがポイントです。登記上は従業員でも、一定の条件を満たすとみなし役員として役員給与の規制(賞与の損金不算入など)を受けます。逆に、登記上の役員でも使用人兼務役員に当たれば、使用人分の給与・賞与を損金にできる余地があります。

この記事では、みなし役員の判定基準、使用人兼務役員になれる人・なれない人、そして給与・賞与の税務上の取扱いを、国税庁タックスアンサー(No.5200・No.5205)にもとづいて解説します。

免責: 本記事は記載時点の法令に基づく一般的な解説です。「経営に従事しているか」の判定は個別の事実認定によるため、個別の判断は税理士にご相談ください。

税法上の「役員」は登記だけでは決まらない

法人税法上の役員は、次のとおりです(法人税法2条15号・法人税法施行令7条、国税庁No.5200)。

  1. 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事および清算人(=登記・選任された役員)
  2. 1以外の者で、次のいずれかに当たるもの(=みなし役員
    • 法人の使用人(職制上、使用人としての地位のみを有する者に限る)以外の者で、その法人の経営に従事している者(相談役・顧問など)
    • 同族会社の使用人のうち、一定の持株要件を満たし、かつ経営に従事している者

つまり、登記していなくても税務上は役員として扱われる人がいる、ということです。役員かどうかで給与の損金算入ルールがまったく変わるため、この判定は役員給与の出発点になります。

みなし役員とは──2つのパターン

パターン①:使用人以外の者で経営に従事している人

取締役になっていない会長・相談役・顧問などが典型です。肩書きにかかわらず、その法人内における地位や職務からみて実質的に経営に従事していると認められれば、税務上の役員(みなし役員)に該当します(国税庁No.5200)。

たとえば、代表を退いた先代社長が「相談役」として資金調達や人事、重要な取引の意思決定に関与し続けているようなケースが該当し得ます。

パターン②:同族会社の使用人で持株要件を満たし経営に従事している人

同族会社の使用人(従業員)のうち、次の3つの持株要件をすべて満たし、かつ経営に従事している人は、みなし役員になります(国税庁No.5200)。

要件 内容
① 50%超基準 株主グループを所有割合の大きい順に並べたとき、初めて所有割合の合計が50%を超えるところまで(第1順位で50%超/第1+第2順位で初めて50%超/第1〜第3順位で初めて50%超)の株主グループに、その使用人が属している
② 10%超基準 その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超える
③ 5%超基準 その使用人本人(その配偶者、およびこれらの者が所有割合50%超を保有する他の会社を含む)の所有割合が5%を超える

※「株主グループ」は、一の株主等と、その株主等と親族関係など特殊な関係のある個人・法人をひとまとめにして数えます。同族会社の判定と同じ考え方です。

具体例:株を持たない社長の妻でも該当し得る

:夫(社長)が株式を70%保有。妻は株を持たず、登記もされていないが、経理部長として資金繰りや人事に深く関与している。

  • 妻は夫と同じ株主グループ(70%・第1順位で50%超)に属する → ①を満たす
  • グループの所有割合70%>10% → ②を満たす
  • ③の判定では本人と配偶者の持株を合計するため、本人0%+夫70%=70%>5% → ③を満たす

3要件を満たすので、あとは「経営に従事しているか」の事実認定次第でみなし役員になり得ます。「株を持っていないから大丈夫」とはならない点に注意してください。なお、③の「本人と配偶者の持株を合計して判定する」という考え方は、国税庁No.5205の質疑応答(持株のない代表取締役の妻の兼務可否)でも確認できます。

「経営に従事」に形式基準はない

経営に従事しているかどうかは、資金調達・人事・設備投資・重要な契約などの経営上の意思決定に参画しているかという実質で判断され、明確な形式基準はありません。役職名や登記の有無では決まらないため、家族に重要な職務を任せている場合は、判定を税理士に相談することをおすすめします。

みなし役員になると何が変わるか

みなし役員に該当すると、その人への給与は役員給与のルールで判定されます。具体的には次の影響があります。

  • 賞与が原則損金不算入になる……役員給与が損金になるのは、原則として定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与のいずれかに該当する場合に限られます(法人税法34条)。従業員なら賞与は原則損金ですが、みなし役員への賞与は、事前確定届出給与の届出などがない限り損金になりません
  • 不相当に高額な部分は損金不算入……役員給与には過大役員給与の損金不算入の規制もかかります。
  • 使用人兼務役員にもなれない……同族会社の使用人で税務上みなし役員とされる人は、使用人兼務役員になれません(国税庁No.5205)。

「知らないうちに家族がみなし役員に該当していて、支給済みの賞与が税務調査で否認される」というのが典型的なリスクです。

使用人兼務役員とは──要件と「なれない役員」

使用人兼務役員の要件

使用人兼務役員とは、役員のうち、部長・課長その他、使用人としての職制上の地位を有し、かつ常時、使用人としての職務に従事する者をいいます(法人税法34条、国税庁No.5205)。「取締役営業部長」「取締役工場長」などが典型です。

使用人兼務役員に該当すると、給与を役員分と使用人分に区分でき、使用人分には役員給与の規制がかからないというメリットがあります。

使用人兼務役員になれない役員(国税庁No.5205)

次の役員は、実際に使用人としての仕事をしていても使用人兼務役員にはなれません。

  1. 代表取締役、代表執行役、代表理事および清算人
  2. 副社長・専務・常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  3. 合名会社・合資会社・合同会社の業務執行社員
  4. 取締役(指名委員会等設置会社の取締役および監査等委員である取締役に限る)、会計参与および監査役ならびに監事
  5. 上記1〜4のほか、同族会社の役員のうち、所有割合により判定した結果、3つの持株要件(50%超到達グループ・グループ10%超・本人等5%超)をすべて満たす役員

オーナー社長の親族役員は、5の持株要件に該当することが多く、「取締役◯◯部長」という肩書きにしても使用人兼務役員とは認められないケースが典型です。ここでも③の5%超基準は本人と配偶者の持株を合計して判定します。

使用人分の給与・賞与の取扱い

使用人兼務役員に該当する場合、給与・賞与は次のように扱われます。

  • 使用人分の給与……使用人としての職務に対する相当な金額であれば、損金に算入できます。
  • 使用人分の賞与……使用人分賞与も税務上は「使用人賞与」に含まれ(国税庁No.5350)、損金にできますが、他の使用人への賞与と同じ時期に支給することが要件です(法人税法施行令70条/使用人兼務役員の使用人分賞与に関する規定)。他の使用人と異なる時期に支給したものは、損金になりません。なお、他の使用人の賞与支給時期に未払金として経理しただけで、実際には他の役員給与の支給時期に支払ったような場合も、「他の使用人と異なる時期の支給」として扱われる点に注意が必要です(法人税基本通達9-2-26)。
  • 役員分の給与……通常の役員給与と同じく、定期同額給与などのルールで判定されます。

なお、使用人分として相当かどうかは、他の使用人の給与水準や職務内容とのバランスで判断されます。役員分・使用人分の区分は、株主総会議事録や給与規程で明確にしておくことが実務上重要です。

まとめ──家族に給与を払うときのチェックポイント

  • 法人税法上の役員は登記より広い。登記していない相談役・顧問や、同族会社の家族従業員もみなし役員になり得る
  • みなし役員の判定は、持株3要件(50%超到達グループ・グループ10%超・本人等〈配偶者含む〉5%超)+経営従事。株を持たない社長の配偶者でも該当し得る。
  • みなし役員に該当すると、賞与は原則損金不算入(事前確定届出給与などの手当てが必要)。
  • 代表者・副社長・専務・常務や、持株要件を満たす同族会社の役員は使用人兼務役員になれない
  • 使用人兼務役員の使用人分賞与は、他の使用人と同じ時期に支給しないと損金にならない。
  • 「経営に従事」は事実認定。家族に重要な職務を任せる場合や賞与を支給したい場合は、事前に税理士へ相談を。

根拠・参考(一次情報)

監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報

本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。

最終更新日:2026.07.09 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

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