棚卸資産の評価方法|原価法6種と低価法、届出をしないと最終仕入原価法

法人税の基礎
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

「決算で在庫を数えたけれど、この在庫を”いくら”で計上すればいいの?」——これが棚卸資産の評価方法の話です。同じ数量の在庫でも、評価額を高くすれば当期の売上原価が小さくなり利益が増え、その分課税所得が増えて税負担も増える方向に働きます。逆に評価額を低くすれば利益は減ります。だからこそ、税務ではどの方法で評価するかがルール化されています。

評価方法には大きく分けて、取得原価をもとに計算する「原価法」(6種類)と、原価と期末時価の低い方をとる「低価法」があります。そして見落としがちなのが、評価方法を税務署に届け出ていない会社は、自動的に「最終仕入原価法」という方法になるという点です(法定評価方法)。

この記事では、棚卸資産の評価方法の全体像、原価法6種のちがい、届出をしないとどうなるか、低価法を適用した場合の期末評価額の考え方までを、中小企業の実務目線で整理します。

免責: 本記事は一般的な解説です。要件のあてはめや個別の判断は、必ず顧問税理士にご相談ください。

1. なぜ棚卸資産の「評価額」で税金が変わるのか

棚卸資産とは、商品・製品・半製品・仕掛品・原材料・貯蔵品など、販売や消費のために持っている在庫のことです。会社の利益(所得)は、ざっくり言うと「売上−売上原価−その他の費用」で計算され、その売上原価は次の式で決まります。

売上原価 = 期首在庫 + 当期仕入 − 期末在庫

つまり、期末在庫の評価額が大きいほど売上原価は小さくなり、当期の利益(=課税所得)は大きくなります。同じ商売をしていても、期末在庫をいくらで評価するかで当期の税額が動く——これが評価方法をルール化する理由です。

そのため法人税法は、期末棚卸資産をどう評価するかを施行令で定め(法人税法29条、施行令28条ほか、参照 2026.07)、会社が勝手に有利・不利を操作できないようにしています。

2. 評価方法の全体像──「原価法」と「低価法」

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図1:棚卸資産の評価方法の全体像(原価法6種+低価法/届出しないと最終仕入原価法)
図1:棚卸資産の評価方法の全体像(原価法6種+低価法/届出しないと最終仕入原価法)

税務上の棚卸資産の評価方法は、原則として次の2つに分かれます(法人税法施行令28条、参照 2026.07)。

  • 原価法……取得原価をもとに期末在庫を評価する方法。計算のしかたで6種類に分かれる。
  • 低価法……原価法で計算した評価額と、期末の時価とを比べて、低い方を評価額とする方法。時価が下がったときに評価損を計上できる。
補足: 上記のほかに、これらの方法では適正に計算できない特別な事情がある場合などに、税務署長の承認を受けて採用する特別な評価方法もあります(法人税法施行令28条の2)。実務ではまれなので、本記事は原価法と低価法を中心に説明します。

まず基本は原価法で、「取得原価をどう計算するか」を6つの方法から選びます。低価法は、その原価法をベースに「時価が下がっていたら低い方をとる」という上乗せの考え方です。

3. 原価法6種のちがい

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図2:原価法6種のちがい早見表
図2:原価法6種のちがい早見表

原価法の6種類は、期末在庫の取得原価をどうやって計算するかという違いです。中小企業でよく使われるのは最終仕入原価法総平均法・移動平均法あたりです。

方法 期末在庫の評価の考え方 向いているケース
個別法 一つひとつの実際の取得価額で評価 宝石・美術品・販売用不動産など、個品管理が行われ、個別評価に合理性があるもの
先入先出法(FIFO) 先に仕入れたものから先に売れたと考え、期末在庫は新しい仕入分で評価 生鮮・型落ちが早い商品
総平均法 期首在庫+当期仕入の総額を総数量で割った平均単価で評価 仕入単価の変動を平準化したいとき
移動平均法 仕入のつど平均単価を計算し直し、その単価で評価 期中も在庫単価を把握したいとき
最終仕入原価法 期末に最も近い時に取得した1単位当たりの取得価額(付随費用込み)で在庫すべてを評価 手間をかけず簡便に済ませたいとき(中小で多い)
売価還元法 期末在庫の売価合計に原価率を掛けて評価 取扱品目が非常に多い小売業など
個別法の注意: 個別法は、単に高価・個性的というだけでなく、取得から販売まで個品ごとに管理していることが前提です。規格に応じて大量に取得するような棚卸資産には選べません。
豆知識: かつてあった「後入先出法(LIFO)」は、平成21年度税制改正で廃止されました。原則として平成21年4月1日以後に開始する事業年度から選べなくなり、廃止前から採用していた法人には経過措置がありましたが、その経過措置も平成22年4月1日以後に開始する事業年度で終わり、現在はどの会社も選べません(参照 2026.07)。古い解説書に載っていることがあるので注意してください。

最終仕入原価法は、期末に最も近い時に取得した同種在庫の1単位当たりの取得価額(購入代価に、引取運賃・購入手数料などの付随費用を加えた金額)を単価として、在庫全体を評価する方法です。直近の仕入価額をほぼそのまま使えるため最も簡単で、多くの中小企業が使っています。ただし、引取運賃などの付随費用は取得価額(単価)に含める必要がある点に注意が必要で、仕入価格が大きく動く商品では実態とズレが出ることもあります。

4. 届出をしないとどうなる?=法定評価方法は「最終仕入原価法」

ここが実務で最重要のポイントです。評価方法は、選んで税務署に届け出て初めてその方法になります。届出をしていない会社(または届け出た方法で評価しなかった会社)は、法律で決められた方法=法定評価方法が自動的に適用されます。

棚卸資産の法定評価方法は「最終仕入原価法による原価法」です(法人税法施行令31条、参照 2026.07)。

  • 届出をしていない中小企業の多くは、意図せずこの最終仕入原価法になっている、ということです。
  • 最終仕入原価法は簡便なので、結果的にそれで問題ないことも多いですが、「自社は届出をしたか」「実際の帳簿の評価方法と一致しているか」は一度確認しておくと安心です。

5. 評価方法の選定・届出・変更の手続き

① 選定と届出

会社を設立して新たに事業を始めた場合などは、設立第1期の確定申告書の提出期限までに「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出して評価方法を選びます(法人税法施行令29条2項、参照 2026.07)。事業の種類ごと・棚卸資産の区分ごとに選ぶことができます。

※ 仮決算による中間申告を行う場合はその中間申告書の提出期限まで、確定申告期限の延長を受けている場合は延長後の申告期限までとされ、届出期限が異なります。

② 変更

いったん選んだ評価方法を変えたいときは、変更しようとする事業年度開始日の前日までに「評価方法の変更承認申請書」を提出し、税務署長の承認を受ける必要があります(法人税法施行令30条)。実務上、採用してからおおむね3年程度は経過していないと、合理的な理由がない限り承認されにくいとされています(法人税基本通達に基づく運用上の目安であり、断定はできません)。

③ 届出書の様式

届出書は国税庁サイトから入手できます(本記事末尾のリンク参照)。事業の種類・棚卸資産の区分・選んだ評価方法を記載して提出します。

6. 低価法──時価が下がったときに評価損を出せる方法

低価法は、原価法で計算した評価額と期末の時価(正味売却価額など)を比べ、低い方を期末評価額とする方法です。値下がりした在庫について低い方の価額を期末評価額とするため、その差額が売上原価に反映され、結果として当期の所得を減らす効果があります(これは低価法という評価方法による期末評価であり、後述の「災害・著しい陳腐化などによる棚卸資産の評価損」とは別の取扱いです)。

  • 低価法を使うには、あらかじめ低価法を選定して届け出ておく必要があります(原価法と同じく届出制)。
  • 原価と時価の比較は、在庫全体をまとめてではなく、種類・品質・型が同じ資産のグループごとに行い、低い方をとるのが原則です(法人税法施行令28条1項2号)。どの単位で比べるかで評価損の金額が変わるため注意してください。ただし実務上は、事業の種類ごと・棚卸資産の区分ごとにまとめて計算することも認められています(法人税基本通達5-2-9、参照 2026.07)。
  • 税務上の低価法は、翌期に評価額を取得原価に戻す「洗替低価法」によります。かつて認められていた「切放し低価法」は平成23年度税制改正で廃止され(平成23年4月1日以後に開始する事業年度から)、現在は洗替低価法のみとなっています。
  • 「時価が下がったら常に自由に評価損」ではなく、あらかじめ低価法を選んでいる場合の仕組みである点に注意してください。

なお、低価法を選んでいなくても、災害や陳腐化などで在庫の価額が著しく低下した等の一定の場合には、別途、棚卸資産の評価損が認められることがあります(ただし要件は厳格です。深追いは本記事では行いません)。

まとめ(中小企業の実務チェックリスト)

棚卸資産の評価額は売上原価=当期利益に直結します。「原価法6種+低価法」「届出しないと最終仕入原価法」の2点を押さえれば、決算で迷いません。

実務チェックリスト

  • ☐ 期末在庫(商品・製品・原材料・仕掛品・貯蔵品)を数え、評価額を計算したか
  • ☐ 自社が採用している評価方法(原価法6種のどれか/低価法か)を把握しているか
  • ☐ 評価方法の届出をしているかを確認したか(していなければ最終仕入原価法が適用)
  • ☐ 帳簿上の評価方法と、届け出た評価方法が一致しているか確認したか
  • ☐ 値下がり在庫について低価法・評価損を検討する場合、あらかじめ低価法を届け出ているか確認したか
  • ☐ 「後入先出法」は現在使えない点を理解しているか(古い資料に注意)

根拠・参考(一次情報)

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監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報

本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。

最終更新日:2026.07.25 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

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