「事務用品や梱包材、切手をまとめ買いしたけれど、買った期に全部経費にしていいの?」——決算前になると必ず出てくる疑問です。結論から言うと、消耗品費は「使った分が経費」が原則で、期末に残っている未使用分は本来「貯蔵品」という資産に振り替えます。ただし、一定の条件を満たす消耗品には、継続して適用することを条件に「買った期に全額経費」にできる特例(法人税基本通達2-2-15)が用意されています。
やっかいなのは、切手・収入印紙・回数券のような「換金性のあるもの」です。これらは原則として期末に貯蔵品として残す扱いですが、実務では継続適用を前提に購入時費用処理が認められる場面もあり、しかも消費税の考え方が法人税とは少しズレます。
この記事では、消耗品費の損金算入時期の原則と特例、期末に貯蔵品へ振り替える範囲、切手・印紙の扱い、そして「少額減価償却資産(器具備品などの資産)」との違いを、中小企業の実務目線で整理します。
免責: 本記事は一般的な解説です。要件のあてはめや個別の判断は、必ず顧問税理士にご相談ください。
1. 原則:使った分が経費、未使用分は期末に「貯蔵品」へ
消耗品費のような棚卸資産は、法人税法上、「消費した日の属する事業年度」の損金に算入するのが原則です。つまり、買った時点ではなく「使った時点」で経費になる、という考え方です(法人税基本通達2-2-15、参照 2026.07)。
そのため、期末(決算日)時点でまだ使っていない在庫がある場合、その未使用分は「貯蔵品」という資産科目に振り替えるのが原則的な処理になります。
- 期中:消耗品を購入 → いったん 消耗品費(費用) で計上
- 期末:未使用の在庫を確認 → 貯蔵品(資産) へ振替(=その分は当期の経費から除く)
振替の仕訳イメージは次のとおりです。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 購入時 | 消耗品費 ×× | 現金預金 ×× |
| 期末(未使用分を資産へ) | 貯蔵品 ×× | 消耗品費 ×× |
| 翌期首(洗替) | 消耗品費 ×× | 貯蔵品 ×× |
厳密に原則を貫くと、期末にボールペンやコピー用紙の在庫まで数えて資産計上する、という話になります。しかし実務でそこまで行うのは負担が大きく、そこで登場するのが次の「特例」です。
2. 継続適用でOK=買った期に経費にできる特例(通達2-2-15)
法人税基本通達2-2-15「消耗品費等」は、原則(消費した日に損金)を示したうえで、次のように定めています(参照 2026.07)。
法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。
かみくだくと、次の①〜③をすべて満たすものは、「買った期に全額経費」でよい、という取扱いです。
- 対象が 事務用消耗品・作業用消耗品・包装材料・広告宣伝用の印刷物・見本品 など、これらに準ずる棚卸資産であること
- 毎期おおむね一定数量を取得していること
- 経常的に消費しているものであること
そして、この処理を選んだら継続して同じ方法で処理すること(=毎期コロコロ変えない)が条件です。この特例があるため、多くの中小企業は事務用品などをいちいち期末に棚卸しせず、購入時の経費計上のままにできています。
製造業の注意: この特例で「買った期に損金」とできる場合でも、作業用消耗品や包装材料などが製品の製造原価を構成する費用にあたるときは、期末に残る製品・仕掛品に対応する部分は当期の損金にならず、棚卸資産(製品・仕掛品)の原価として翌期以降に繰り越されます(法人税基本通達2-2-15の注、法人税法29条)。この場合は全額が当期経費になるとは限らない点に注意してください。
3. 特例が使える条件と、使えないケース
特例のカギは「おおむね一定数量を、経常的に消費」という部分です。ここを外れると、原則どおり未使用分を貯蔵品にする必要が出てきます。
使いやすいケース(特例OKになりやすい)
- 毎月・毎期おおむね同じくらいの量を買い、通常のペースで使い切っている事務用品・梱包材など
- 在庫量が期末ごとに大きく変動しない消耗品
注意が必要なケース(特例になじみにくい)
- 決算対策として、期末間際に通常使用量をはるかに超える大量まとめ買いをした場合。「おおむね一定数量」「経常的に消費」の要件から外れると評価されれば、未使用分は当期の損金と認められず、貯蔵品計上を求められる可能性があります(否認リスク)。
- 特定の一回限りのイベント用にまとめて仕入れた印刷物など、経常的な消費とは言いにくいもの
つまり「消耗品はいくら買っても買った期の経費」と単純に理解するのは危険です。通常のペースを大きく超える駆け込み購入は、節税効果が否認され得る点に注意してください(断定はできませんが、リスクとして押さえておくべき論点です)。
4. 切手・収入印紙・回数券の期末処理
切手や収入印紙、回数券などは換金性がある(=現金に近い)ため、事務用品とは分けて考えます。
法人税(損金)の考え方
- 原則:購入時ではなく、使った時(切手を貼って投函した時など)に損金。期末の未使用分は 貯蔵品 として資産計上するのが原則です。
- 実務上の容認:切手なども、事務用消耗品と同じくおおむね一定数量を経常的に消費していて継続適用する場合には、購入時に費用処理する扱いが認められる場面もあります。ただし、継続適用というだけで無条件に認められるわけではなく、金額が大きい未使用ストックまで費用のまま放置するのは避け、期末に手元有高を確認して貯蔵品へ振り替えるのが安全です。
収入印紙の位置づけ
- 収入印紙は「租税公課」として処理しますが、これも未使用分は期末に貯蔵品へ。使った分(契約書等に貼付した分)が当期の損金です。
消費税の扱い(法人税とはズレる点)
- 郵便切手類・物品切手等は、購入時は原則として課税仕入れに該当せず、郵便などの役務提供を受けた時(使用時)に課税仕入れとするのが原則です。ただし、自社で使用する郵便切手類・物品切手等に限り、継続適用を条件に「対価を支払った日(購入時)」に課税仕入れとすることも認められています(消費税法基本通達11-3-7の趣旨)。なお、インボイス制度下でこの購入時控除ができるのは、郵便ポスト投函による郵便役務など一定の帳簿保存要件のみで仕入税額控除が認められるものに限られます(参照 2026.07)。
- 収入印紙は、郵便局や印紙売りさばき所など一定の場所での譲渡が非課税とされるため、そもそも課税仕入れの対象外です(消費税法基本通達6-4-1の趣旨)。
このように、切手は「法人税では貯蔵品/費用、消費税では課税仕入れの時期」と論点が二重になります。処理を選んだら法人税・消費税とも継続適用を守るのが実務のポイントです(消費税の詳細は本記事では深追いしません)。
| 品目 | 期末未使用分の原則 | 使った分(損金/仕入) |
|---|---|---|
| 事務用品・梱包材など | 貯蔵品(ただし特例で購入時費用も可) | 消耗品費 |
| 郵便切手 | 貯蔵品 | 通信費(消費税は課税仕入れ/時期に注意) |
| 収入印紙 | 貯蔵品 | 租税公課(郵便局・印紙売りさばき所等で購入する通常は消費税対象外) |
| 回数券・物品切手 | 貯蔵品 | 使用時に費用 |
5. 少額減価償却資産との違い
よく混同されるのが「少額減価償却資産」との違いです。両者はまったく別の制度なので、切り分けを押さえましょう。
- 消耗品・貯蔵品(本記事)=棚卸資産の話。事務用品・材料など「使ってなくなるもの」の損金算入の”時期”(使った時か、買った時か)の論点。
- 少額減価償却資産=器具備品・工具などの減価償却資産(固定資産)の話。使用可能期間が1年未満、または取得価額が10万円未満(両者はどちらか一方を満たせばよい別々の基準)なら事業の用に供した事業年度に全額損金、20万円未満は一括償却資産として3年均等償却する方法を選択でき、中小企業者等は青色申告など一定の要件のもと特例で40万円未満(令和8年4月1日以後の取得。改正前は30万円未満/年間合計300万円が上限)まで損金算入——といった“金額基準”の論点です(No.5403/No.5408。40万円未満への引上げは令和8年度改正によるもので、中小企業庁・財務省の改正資料で確認。国税庁No.5408は基準日の関係で旧30万円のまま表示される場合あり。参照 2026.07)。
なお、40万円未満の特例は「買っただけ」では使えません。実際に事業の用に供し、青色申告で取得価額の明細(別表)を添付するなどの手続が必要で、対象は常時使用する従業員が400人以下(電子申告が義務づけられる特定法人は300人以下)の中小企業者等、適用期限は令和11年3月31日までです(令和8年度改正で従業員500人以下→400人以下・期限を3年延長。特定法人の300人以下は据置き。詳しい要件は姉妹記事へ)。本記事の主題「買った期に経費」と混同しないよう注意してください。
ざっくり言えば、「なくなる消耗品」か「使い続ける資産か」で入り口が分かれます。パソコンや工具のように繰り返し使うものは減価償却資産のルート、コピー用紙や梱包材のように消費してなくなるものは消耗品・貯蔵品のルートです。10万・20万・40万円の金額基準や特例の要件は、姉妹記事で詳しく解説しています(「次に読む」参照)。
まとめ(期末チェックリスト)
消耗品費は「使った分が経費・未使用は貯蔵品」が原則。特例と換金性のあるものの扱いを押さえれば、期末処理で迷いません。
期末チェックリスト
- ☐ 事務用品・梱包材などは、毎期おおむね一定量を経常的に消費しているか(=特例を継続適用できるか)を確認した
- ☐ 決算前の通常量を超える駆け込み大量購入がないか(あれば未使用分は貯蔵品検討)を確認した
- ☐ 切手・収入印紙・回数券の手元有高を数え、未使用分の貯蔵品計上を検討した
- ☐ 切手等の消費税の課税仕入れの時期(購入時か使用時か)を継続適用しているか確認した
- ☐ 処理方法を前期と変えていないか(継続適用)を確認した
- ☐ 器具備品など「使い続ける資産」は消耗品ではなく減価償却資産として処理していないか確認した
根拠・参考(一次情報)
- 法人税基本通達 2-2-15「消耗品費等」|国税庁(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_02_02.htm - No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示(令和7年4月1日現在法令等)|国税庁(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm - No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(令和7年4月1日現在法令等)|国税庁(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm - 少額減価償却資産の特例(40万円未満へ拡充・年300万円上限・令和8年度改正)|中小企業庁(参照 2026.07)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/syougaku_shisan.html - 消費税法基本通達 第11章第3節「課税仕入れ等の時期」(郵便切手類・物品切手等/11-3-7)|国税庁(参照 2026.07)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/03.htm - 法人税法 第22条第3項(損金の額に算入すべき金額)・第29条(棚卸資産の売上原価等の計算及びその評価の方法)|e-Gov法令検索(参照 2026.07)
https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000034
- 少額減価償却資産の使い分け(10万・20万・40万円)
- 修繕費と資本的支出の区分(※スラッグは公開時に実在確認)
監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.21 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者
本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。



