会社の預金に利子がついたり、保有する株式から配当を受け取ったりすると、その支払いの段階で所得税と復興特別所得税があらかじめ源泉徴収されています。この源泉徴収された所得税は、法人にとっては「先に取られた税金」です。
法人税の計算では、この源泉所得税を法人税額から差し引くことができます。これが所得税額控除です。うまく使えば、二重に税負担することなく源泉分を精算でき、控除しきれなければ還付も受けられます。この記事では、控除の対象・所有期間按分・手続きの注意点を、国税庁の一次情報にもとづいて解説します。
所得税額控除とは
法人が支払を受ける利子等・配当等・給付補てん金・賞金などについて源泉徴収された所得税および復興特別所得税の額は、法人税額から控除することができます(法人税法68条、国税庁タックスアンサー No.5760)。
法人税は会社の所得(もうけ)に対してかかる税金ですが、利子や配当を受け取る段階ですでに所得税が源泉徴収されています。そのままでは源泉分だけ余計に負担することになるため、法人税の申告で税額から差し引いて精算するしくみになっています。
なお、集団投資信託の収益の分配などで生じる分配時調整外国税相当額の控除は、別のコード(No.5761)で扱う別制度です。所得税額控除とは区別されており、本記事の対象からも除かれます。混同しないようにしましょう。
注意(源泉徴収されない配当がある): 令和5年10月1日以後に支払を受けるべき一定の完全子法人株式等・関連法人株式等(他の内国法人の株式等を直接3分の1超保有する場合など)に係る配当等については、所得税の源泉徴収が行われません。この場合、差し引かれる所得税がないため、その配当に係る所得税額控除も発生しません。グループ会社間の配当などでは、この点をあわせて確認してください。
全額控除できるもの/所有期間按分が必要なもの
源泉徴収された所得税等は、原則として全額が所得税額控除の対象になります。ただし、次のような配当等にあたるものについては、元本を所有していた期間に対応する部分の額だけが控除の対象になります(No.5760)。
No.5760では、按分が必要な「配当等」として次の(1)〜(5)が挙げられています。
- 法人から受ける剰余金の配当・利益の配当・剰余金の分配・金銭の分配(資本剰余金の減少に伴うもの、みなし配当、分割型分割によるもの、株式分配など一定のものを除く)
- 集団投資信託(合同運用信託・公社債投資信託・公社債等運用投資信託など一定のものを除く)の収益の分配
- 国外投資信託の配当等
- 国外株式等の配当等
- 一定の短期公社債以外の割引債の償還差益
按分が必要になるのは、配当の計算対象期間の途中で株式を取得した場合、その期間すべてを保有していたわけではないため、保有していた期間分だけを控除対象にするという考え方によります。預金利子のように所有期間按分が不要なものと、上記の配当等のように按分が必要なものがある点を押さえておきましょう。
所有期間按分の計算(原則法と簡便法)
配当等について所有期間に対応する部分を計算する方法には、原則法(原則的な方法)と簡便法があり、事業年度ごとにどちらかを選べます(No.5760)。申告書の別表六(一)では、原則法を「個別法」、簡便法を「銘柄別簡便法」と表記します。申告書を開いたときに迷わないよう、対応を覚えておくと便利です。
原則法(別表六(一)では「個別法」)は、元本の銘柄ごと・所有期間の月数ごとに算式で按分計算する方法です。正確ですが、銘柄や取引が多いと手間がかかります。
簡便法(別表六(一)では「銘柄別簡便法」)は、元本を「株式および出資」と「集団投資信託の受益権」に区分し、さらに配当等の計算期間が1年を超えるものと1年以下のものに分けたうえで、その区分に属するすべての元本について銘柄ごとに、期首(計算期間開始時)と期末(計算期間終了時)の所有元本数から次の算式で控除対象額を求めます。
- A:配当等の計算期間の開始時に所有していた元本の数
- B:配当等の計算期間の終了時に所有していた元本の数
期首から保有していた分(A)は全期間の対応分として、期中に増えた分(B-A)は概算の割合(1年以下なら1/2、1年超なら1/12)で対応期間を見積もる、という考え方です。どちらの方法が有利かは保有状況によって変わるため、実務では両方を試算して選ぶこともあります。

控除しきれないときは還付|控除を受けない場合は損金算入
控除する所得税等の額が、その事業年度の法人税額より多い場合は、控除しきれなかった金額が還付されます(No.5760、法人税法78条)。赤字などで法人税額が小さい年でも、源泉分が切り捨てにならずに戻ってくるのが特徴です。
一方で、所得税額控除は必ず使わなければならないものではありません。所得税額控除を受けなかった所得税等は、所得金額の計算上、損金に算入できます(No.5760、法人税法40条)。ただし、所得税額控除を選択すれば対象額を法人税額から直接控除でき、控除しきれない額も還付されるため、通常は所得税額控除を受ける方が有利です。
損金算入は、源泉分の全額が戻るのではなく、所得が減ることによる税負担の減少にとどまる点が違います。たとえば源泉所得税が100万円だった場合、次のように差が出ます。
- 所得税額控除:100万円を法人税額から控除(控除しきれなければ還付)。実質的に源泉分がそのまま精算される。
- 損金算入:所得が100万円減るだけなので、税負担の減少はその税率相当額(実効税率が約30%なら約30万円)にとどまる。
このように、通常の税額比較では所得税額控除の方が明確に有利です。損金算入は、所得税額控除を受けなかった場合の取扱いと理解しておきましょう。

申告手続と実務(別表六(一))
所得税額控除を受けるには、確定申告書等に別表六(一)を添付し、控除を受けようとする金額とその計算明細を記載します。国税庁も、別表六(一)の記載が必要であると案内しています(No.5760)。記載の裏づけとなる資料として、預金通帳・取引明細・証券会社の年間取引報告書・配当金計算書・支払通知書などで、源泉徴収された利子・配当の金額を管理しておくと安心です。
別表六(一)に記載する利子・配当等は、単純な入金日だけでなく当期への帰属で判定します。国税庁の記載要領では、利子等は期末までに利払期が到来しているもの、配当等は通常必要な支払期間内に受け取ることが見込まれるものも対象とされています。決算日までに現金で受け取ったものだけに限られない点に注意しましょう。
配当については、所得税額控除(税額の計算)と、受取配当等の益金不算入(所得の計算)を別々に処理します。同じ配当をめぐって2つの制度が関係する点に注意しましょう。
まとめ
- 所得税額控除は、法人が受け取る利子・配当などから源泉徴収された所得税・復興特別所得税を法人税額から差し引ける制度(法人税法68条、No.5760)。
- 源泉所得税は原則全額が控除対象。ただし配当等(No.5760の(1)〜(5))は元本の所有期間に対応する部分のみ(原則法・簡便法を選択)。
- 控除しきれない額は還付される。控除を受けた所得税は損金不算入。受けなかった額は損金算入できるが、通常は税額控除の方が有利。
- 令和5年10月1日以後、一定の完全子法人株式等・関連法人株式等に係る配当は源泉徴収されず、その配当に係る所得税額控除も発生しない。
- 申告では別表六(一)の記載が必要。配当は益金不算入(所得計算)と所得税額控除(税額計算)を別々に処理する。
根拠・参考(一次情報)
- 国税庁タックスアンサー No.5760「所得税額控除」(令和7年4月1日現在法令等。対象・所有期間按分の算式・還付・損金不算入・別表六(一))
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5760.htm - 根拠法令:法人税法40条(損金不算入)・68条(所得税額の控除)・78条(還付)、所得税法177条(完全子法人株式等・関連法人株式等に係る配当等の源泉徴収不適用)ほか(No.5760「根拠法令等」欄/e-Gov法令検索で確認)
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.13 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

