会計ソフト、業務システム、自社開発のアプリ——こうしたソフトウェアを購入したり作ったりしたとき、その費用は買った年に一括で経費にできるのでしょうか。
原則として、ソフトウェアは「無形固定資産」に当たり、資産に計上して減価償却していきます。耐用年数は、自社で使うソフトなら5年、複写して販売する原本や研究開発用なら3年です。ただし、金額が少額なら一括で経費にできる特例もあり、導入時の設定費用をどこまで取得価額に含めるかも迷いやすいところです。
この記事では、ソフトウェアの耐用年数・償却方法・取得価額の範囲・少額の扱いを、国税庁タックスアンサー No.5461 をもとに整理します。
免責: 本記事は記載時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。個別の判断は税理士にご相談ください。
1. ソフトウェアは「無形固定資産」|原則は資産計上して減価償却
ソフトウェアは、税務上、減価償却資産(無形固定資産)に該当します(No.5461)。
つまり、業務ソフトやシステムを購入・開発した費用は、原則として支出時に一括で損金にはできず、いったん資産(ソフトウェア)として計上し、耐用年数にわたって減価償却で少しずつ損金にしていきます。
「無形」とはいえ、建物や機械と同じ減価償却資産である点は変わりません。まずは「ソフトは原則、資産計上して償却する」を押さえたうえで、次の耐用年数・少額特例を確認していきます。

2. 耐用年数|自社利用は5年・複写販売用/研究開発用は3年
ソフトウェアの耐用年数は、用途によって2種類に分かれます(No.5461、耐用年数省令別表第三)。
| ソフトウェアの用途 | 耐用年数 |
|---|---|
| 複写して販売するための原本、または研究開発用のもの | 3年 |
| その他のもの(自社の業務で利用するソフトなど) | 5年 |
中小企業が会計ソフトや業務システムを購入・開発して自社で使う場合は、「その他のもの」に当たり、耐用年数は5年です。3年になるのは、ソフトを複写して販売するための大もと(製品マスター=原本)や、研究開発専用のものに限られます。個別の顧客向けに受託開発して納品するようなソフトが、すべて3年になるわけではない点に注意してください。
3. 償却方法|無形固定資産は「定額法」(残存価額ゼロ・月割り)
ソフトウェアなどの無形固定資産の償却方法は、定額法です(定率法は選べません)。無形固定資産は税務上の残存価額がゼロとされるため、取得価額を耐用年数で均等に配分するイメージになります。
自社利用ソフト(耐用年数5年)の1年分の償却費は、次のように計算します。
償却費(1年分)= 取得価額 × 定額法の償却率0.200(耐用年数5年) 【例】取得価額100万円 → 100万円 × 0.200 = 20万円(1年分)
事業の用に供した(使い始めた)月からの月割りで計算するため、期の途中で使い始めた初年度は、使った月数分だけの償却になります。たとえば決算の3か月前に使い始めたら、初年度は「20万円 × 3か月 ÷ 12か月=5万円」です。
なお、税務上の残存価額はゼロですが、帳簿上は除却等をするまで1円の備忘価額を残すため、最終年度の償却額は通常1円少なくなります(上の例では最終年度は厳密には20万円ではなく19万9,999円)。

4. 取得価額に含める費用・含めなくてよい費用
ソフトウェアの取得価額は、購入代金だけではありません。事業で使えるようにするために直接かかった費用も含めます(No.5461)。
取得価額に含めるもの
- 購入した場合:購入の代価 + 購入に要した費用 + 事業の用に供するために直接要した費用
- 導入にあたって必要な設定作業の費用や、自社の仕様に合わせるための修正作業の費用も、取得価額に算入します。
- 自社で製作した場合:製作に要した原材料費・労務費・経費 + 事業供用に直接要した費用
取得価額に含めなくてよいもの(No.5461)
次のような費用は、取得価額に算入しないことができます。
- 自社製作で、製作計画の変更などにより仕損じが生じ、不要となったことが明らかな費用
- 研究開発費(自社利用ソフトの研究開発費は、将来の収益獲得・費用削減にならないことが明らかな場合に限る)
- 製作等のための間接費・付随費用で、その合計額が少額(製作原価のおおむね3%以内)のもの
導入時の初期設定やカスタマイズ費を「支払手数料」などで一括費用にしてしまいがちですが、原則は取得価額に含めて償却する点に注意します。
「研究開発用ソフト」と「研究開発費」は別物: 「研究開発用ソフトウェアそのもの」の取得価額は、耐用年数3年で減価償却します(上の耐用年数の表)。一方、ソフトウェアの製作過程で発生した研究開発費は、一定の場合に取得価額へ算入しないことができます(上記2)。この二つは別の取扱いです。なお、自社利用ソフトに係る研究開発費を除外できるのは、そのソフトの利用により将来の収益獲得または費用削減にならないことが明らかな場合に限られます。
5. 少額なら一括経費もできる|10万・20万・40万円基準との関係
ソフトウェアも減価償却資産なので、金額が少額であれば、資産計上して5年償却する代わりに早期に損金にできる制度が使えます。
| 取得価額 | 扱い |
|---|---|
| 10万円未満 | 少額の減価償却資産として全額損金算入できる |
| 20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等償却できる |
| 40万円未満 | 中小企業者等の特例により全額損金算入できる場合がある |
| 30万円以上40万円未満 | 2026年4月1日以後に取得・製作等をした資産から対象(令和8年度改正) |
30万円未満・40万円未満のどちらの取得価額基準を適用するかは、資産を取得・製作等した日で判定します(2026年4月1日以後の取得等から40万円未満)。一方、全額損金算入や減価償却を行う時期は、原則として、その資産を事業の用に供した日を含む事業年度です。年末に購入して箱に入れたままのソフトや、設定が完了しておらず使用できないシステムは、原則としてまだ事業供用していません。
どの基準を使うかは金額と会社の要件しだいです。判定のしかたや税込・税抜の考え方などは、少額減価償却資産の使い分けで詳しく整理しています。
注意(中小企業者等の少額減価償却資産の特例・措法67の5): 令和8年度改正により、取得価額基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられました(2026年4月1日以後に取得・製作等をする資産から適用)。年間合計300万円までの上限は維持され、適用期限は2029年(令和11年)3月31日までです。対象となる中小企業者等のうち、通常の中小企業者は常時使用する従業員数が400人以下であることが必要です(一定の組合等は300人以下)。このほか、資本金や株主構成などの要件があります。なお、事業年度が1年未満の場合、300万円の限度額は事業年度の月数に応じて月割りされます。適用するには、事業供用した事業年度に損金経理し、申告書へ明細(別表十六(七)+適用額明細書)を添付する必要があります。適用の可否は最新の要件を確認してください。
6. 迷いやすいケース|クラウド(SaaS)利用料・バージョンアップ
クラウドサービス(SaaS)の月額利用料
一般的なSaaSの月額・年額利用料は、ソフトウェアを取得する対価ではなくサービス提供の対価であるため、原則としてサービス提供期間に対応して費用処理します。ただし、導入時に独自プログラムの開発費や大規模なカスタマイズ費が含まれる場合は、その部分について別途、資産計上の要否を判定する必要があります。年払いで翌期分を先払いした場合の前払費用の扱いは、短期前払費用の特例なども確認してください。
バージョンアップ・機能追加の費用
すでに使っているソフトへの支出は、内容に応じて次のように分かれます。
- 既存ソフトの仕様を大幅に変更し、実質的に新たなソフトウェアを製作した場合 → その費用は新たなソフトウェアの取得価額
- 新機能の追加や機能向上に当たるが、新しいソフトの製作とまではいえない支出 → 資本的支出
- 障害の除去・バグ修正・現状の効用維持に当たる支出 → 修繕費(その期の費用)
この考え方は、固定資産の修繕費と資本的支出の違いと共通します。
自社開発の途中段階
自社でソフトを開発している途中の費用は、会計上は一般に「ソフトウェア仮勘定」などで集計し、完成して事業に使い始めた時点でソフトウェアに振り替えて償却を開始します。研究開発の性格が強い費用は、取得価額に含めないことができる点は前述のとおりです。
まとめ
ソフトウェアの減価償却は、「原則は資産計上して5年(自社利用)で償却」を基本に押さえます。
- ソフトウェアは無形固定資産。原則、資産計上して定額法で減価償却する。
- 耐用年数は自社利用5年/複写して販売する原本・研究開発用3年(No.5461)。
- 取得価額には、購入代金だけでなく設定作業・自社仕様の修正費なども含める。研究開発費・仕損じ・少額の間接費は含めなくてよい。
- 少額(10万・20万・40万円未満)なら、一括経費や一括償却資産・中小特例で早期に損金にできる。40万円か30万円かの基準は取得等の日で判定し、損金にする時期は事業供用した事業年度。
- SaaSの月額利用料は原則サービス提供期間に対応する費用、機能向上のバージョンアップは資本的支出、バグ修正・現状維持は修繕費。
金額や用途によって処理が変わるため、判断に迷う場合は税理士に相談すると安心です。
- 少額減価償却資産の使い分け(10万・20万・40万円の少額判定を整理)
- 減価償却の定額法と定率法の違い(償却方法の基本)
監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.13 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者
本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

