圧縮記帳とは|国庫補助金・保険金を受け取ったときの課税繰延をわかりやすく

減価償却・設備投資
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています



国や自治体から補助金をもらって機械を買った、あるいは火災で倉庫が焼けて保険金を受け取り建て直した——こうしたとき、受け取った補助金や保険金は会計上・税務上の利益(受贈益・保険差益)となり、そのままでは法人税がかかってしまいます。せっかくの補助金や保険金が税金で目減りしては、設備の再取得が苦しくなります。

そこで、一定の要件を満たせば、その利益への課税を将来に繰り延べることができます。これが圧縮記帳です。ただし圧縮記帳は税金の「免除」ではなく「繰延べ」で、あとで効いてくる注意点もあります。この記事では、代表的な国庫補助金等と保険金等の圧縮記帳のしくみを中心に、買換え・交換・収用による圧縮記帳にも簡単に触れながら、国税庁の一次情報にもとづいて解説します。

免責: 本記事は記載時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。適用要件や限度額は個別事情・改正で変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。

圧縮記帳とは

圧縮記帳とは、補助金や保険差益などで固定資産を取得したときに、その資産の帳簿価額を一定額まで減額(圧縮)し、同額を損金(圧縮損)に計上することで、受贈益・保険差益への課税を繰り延べる制度です。

ポイントは、これが課税の「繰延べ」であって「免除」ではないことです。取得価額を圧縮すると、その後の減価償却費が小さくなり、あるいは資産を売却したときの簿価が小さくなるため、将来の所得(もうけ)はそのぶん増えます。つまり、いま課税されない代わりに、将来にわたって少しずつ課税されるイメージです。それでも、資産を取得した年に一度に大きな税負担が生じるのを避けられるため、資金繰りの面で意味があります。

国庫補助金等の圧縮記帳

国や地方公共団体などから補助金・助成金(国庫補助金等)の交付を受け、その補助金で固定資産を取得または改良した場合、一定の要件のもとで、補助金相当額を圧縮記帳できます(法人税法42条〜44条、法人税基本通達 第10章第2節)。

主な要件は次のとおりです。

  • その事業年度終了の時までに、補助金の返還を要しないことが確定していること。
  • 交付の目的に適合した固定資産を取得・改良していること。
  • 帳簿価額を減額する経理(または積立金として積み立てる経理)をしていること。
  • 確定申告書に必要な明細(別表13(1))を添付すること。

補助金の返還が事業年度末までに確定していない場合は、いったん特別勘定として経理し、返還不要が確定した事業年度に圧縮記帳へ振り替えます(法人税法43条・44条)。

くわしくは国庫補助金の圧縮記帳の記事で、圧縮限度額・仕訳・計算例とともに解説しています。

保険金等の圧縮記帳

火災・事故などで固定資産が滅失・損壊し、その日から3年以内に支払の確定した保険金・共済金・損害賠償金(保険金等)を受け取って、滅失した固定資産に代替する同一種類の固定資産(代替資産)を取得したり、損壊した固定資産・代替資産となるべき資産を改良したりした場合も、圧縮記帳ができます(国税庁 No.5608、法人税法47条〜49条)。

このときの圧縮限度額は、次の考え方で計算します(No.5608)。

まず、受け取った保険金等から、滅失等のために支出した経費(取り壊し費用など)と滅失した資産の帳簿価額を差し引いた保険差益金を求めます。そのうえで、代替資産の取得に充てた保険金の割合に応じて圧縮限度額を計算します。

国税庁の計算例(No.5608):被害(滅失)直前の帳簿価額1,000万円/滅失により支出した経費50万円/保険金等2,000万円/代替資産の取得価額3,000万円
保険差益金=2,000万円 − 50万円 − 1,000万円 = 950万円。これに代替資産の取得に充てた保険金の割合を乗じて圧縮限度額が計算されます。

なお、保険金を受け取った事業年度中に代替資産を取得できない場合でも、翌期首から原則2年以内に取得(または改良)する見込みがあれば、圧縮限度額の範囲内で特別勘定を設けて損金算入できます。

くわしくは保険金の圧縮記帳の記事で、保険差益金・差益割合の計算式や計算例とともに解説しています。

そのほかの圧縮記帳(買換え・交換・収用)

圧縮記帳には、国庫補助金等・保険金等のほかにも、資産の買換え・交換・収用に伴う課税繰延の制度があります。ここでは概要のみ簡単に触れます。なお、国庫補助金等・保険金等が原則として利益の全額を繰り延べられるのに対し、下記のうち買換えの特例は繰り延べられるのが一部にとどまる点に注意が必要です。

特定資産の買換えの圧縮記帳(租税特別措置法65条の7)

事業用の資産を譲渡し、一定の買換資産を取得して事業に使った場合に、譲渡益への課税を繰り延べる制度です。代表例は、所有期間10年超の土地・建物等を国内の土地・建物等に買い換えるケースです。ただしこれは譲渡益の全額ではなく原則80%を繰り延べる(残りは課税される)一部繰延で、届出書の提出や明細書(別表13(5))の添付が必要です。

なお、買換えの特例は租税特別措置法上の制度であり、適用期限や対象資産、繰延割合が改正で見直されることがあります。実際に適用を検討する場合は、最新の法令・国税庁情報を確認してください。

固定資産の交換の圧縮記帳(法人税法50条)

土地は土地、建物は建物というように、同じ種類の固定資産どうしを交換したときに、交換差益への課税を繰り延べる制度です。双方が1年以上所有していた固定資産であること、交換後も同じ用途に使うこと、時価の差が高い方の価額の20%以内であることなどの要件があります(別表13(3))。

収用等の圧縮記帳(租税特別措置法64条)

土地・建物などが公共事業のために収用され、その対価補償金で代替資産を取得した場合に、譲渡益への課税を繰り延べる制度です。これに代えて5,000万円の特別控除(租税特別措置法65条の2)を選ぶこともできますが、両方の併用はできません。くわしくは収用の圧縮記帳の記事で解説しています。

圧縮記帳のメリット・デメリットと手続き

メリットは、補助金・保険金を受け取った年に一度に生じる課税を繰り延べ、その年の資金流出(納税)を抑えられることです。設備の再取得や事業再建に資金を回しやすくなります。

デメリット(注意点)は、前述のとおり圧縮後は減価償却費が小さくなるため、翌年以降の所得が増え、税負担が将来に移るだけである点です。

もう一つの注意点が、特別償却・税額控除との重複適用です。ここは圧縮記帳の根拠となる法律によって扱いが分かれるため、混同しないよう注意が必要です。

  • 法人税法上の圧縮記帳(国庫補助金・保険金・交換)を受けた資産でも、中小企業投資促進税制などの租税特別措置法の特別償却・税額控除は重複して適用できます。ただし、その特別償却・税額控除は圧縮後(減額後)の取得価額をもとに計算されます。
  • 一方、租税特別措置法上の圧縮記帳(買換え・収用など)を受けた資産は、これらの特別償却・税額控除と重複して適用できません(国税庁 No.5433 注意事項)。
  • なお、同じ資産について、特別償却と税額控除はどちらか一方しか選べません(両方の重複適用は不可)。

手続きとしては、確定申告書に圧縮記帳(または特別勘定)の明細書(国庫補助金等は別表13(1)、保険金等は別表13(2))を添付する必要があります(No.5608ほか)。会計処理には、帳簿価額を直接減額する方法と、剰余金処分で積立金として積み立てる方法があります。

まとめ

  • 圧縮記帳は、国庫補助金・保険差益などで固定資産を取得したときに、その利益への課税を繰り延べる制度。
  • 国庫補助金等の圧縮記帳は、返還不要が事業年度末までに確定し、目的に適合した固定資産を取得・改良した場合などに適用(法法42〜44)。
  • 保険金等の圧縮記帳は、滅失・損壊から3年以内の保険金等で同一種類の代替資産を取得した場合などに、保険差益金をもとにした圧縮限度額の範囲で適用(No.5608、法法47〜49)。
  • このほか、買換え(措法65の7・原則80%繰延)・交換(法法50)・収用(措法64)にも圧縮記帳の制度がある。
  • 圧縮記帳は「免除」ではなく「繰延べ」。圧縮後は減価償却費が減り、将来の所得が増える。
  • 適用には確定申告書への別表13の添付が必要。法人税法上の圧縮記帳(補助金・保険等)は特別償却・税額控除と併用できるが、措置法上の圧縮記帳(買換え・収用)は併用不可。

根拠・参考(一次情報)

  • 国税庁タックスアンサー No.5608「保険金等で取得した固定資産等の圧縮記帳」(令和7年4月1日現在法令等。要件・圧縮限度額の計算式・計算例・特別勘定・別表13(2)。根拠法令:法法47・48・49、法令84・84の2・85・86・87・89)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5608.htm
  • 国税庁 法人税基本通達 第10章第2節「国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳」(通達10-2-1が根拠条文として法法42条1項・43条1項・44条1項を明示)
    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/10/10_02.htm
  • 国税庁タックスアンサー No.5600「土地や建物を交換したときの圧縮記帳」(令和7年4月1日現在法令等。交換の要件・圧縮限度額・別表13(3)。根拠法令:法法50、法令92、法基通10-6-3・10-6-7・10-6-9)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5600.htm
  • 国税庁タックスアンサー No.5651「特定資産を買い換えた場合の圧縮記帳」(令和7年4月1日現在法令等。買換えの対象・圧縮限度額=圧縮基礎取得価額×差益割合×80/100・別表13(5)・届出書。昭和45年4月1日〜令和8年3月31日の譲渡等が対象。根拠法令:措法65の7、措令39の7ほか)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5651.htm
  • 国税庁タックスアンサー No.5433「中小企業投資促進税制」(令和7年4月1日現在法令等。注意事項2=特別償却・税額控除の適用資産は「租税特別措置法上の圧縮記帳」等との重複適用不可。根拠法令:措法42の6ほか)
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5433.htm
  • 根拠法令:法人税法42条〜44条(国庫補助金等)・47条〜49条(保険金等)・50条(交換)、租税特別措置法64条(収用等)・65条の2(収用等の5,000万円特別控除)・65条の7(特定資産の買換え)、法人税法施行令84条・84条の2・85条・86条・87条・89条ほか(e-Gov法令検索で確認)
監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.06 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

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