減価償却の定額法と定率法|計算方法と選び方を税理士がわかりやすく解説

減価償却・設備投資
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

建物・機械・車両などの高額な資産は、買った年に取得費の全額を経費にできるわけではありません。使用できる期間(耐用年数)にわたって少しずつ費用にしていく手続きが減価償却で、その分け方に定額法定率法の2つがあります。

どちらを選ぶかで、毎年の経費のペースと目先の税負担が変わります。この記事では、両者の計算方法と具体例、選び方、資産ごとの制限、届出のルールまでを、国税庁の一次情報にもとづいて整理します。

免責: 本記事は記載時点の法令にもとづく一般的な解説です。償却率・制度は改正で変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。

減価償却とは(前提のおさらい)

減価償却とは、時間の経過とともに価値が減っていく資産の取得費を、耐用年数にわたって分割して費用に計上する会計・税務処理です。耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で資産の種類ごとに定められています。

平成19年4月1日以後に取得した資産は、残存価額や償却可能限度額が廃止され、耐用年数が過ぎたあとは帳簿価額1円(備忘価額)まで償却できます(国税庁 No.5410)。この記事は、この現行制度を前提に解説します。

定額法とは

定額法は、毎年同じ金額を償却する方法です。取得価額に一定の「定額法の償却率」を掛けて計算します。

計算式:
各年の償却費 = 取得価額 × 定額法の償却率

例)取得価額1,000万円・耐用年数10年(定額法の償却率0.100)の機械の場合

毎年の償却費 = 1,000万円 × 0.100 = 100万円

耐用年数10年なら、ほぼ100万円ずつ10年かけて償却します(最終年は残高を1円残すため99万9,999円)。毎期同額なので損益計画が立てやすく、帳簿も単純です。

定率法とは

定率法は、未償却残高(帳簿価額)に一定の率を掛ける方法です。残高が大きい初年度の償却費が最も大きく、年を追うごとに小さくなります。

計算式(原則):
各年の償却費(調整前償却額) = 未償却残高 × 定率法の償却率

平成24年4月1日以後に取得した資産の定率法は、定額法の償却率を2倍した率を使うため「200%定率法」と呼ばれます(それ以前は2.5倍の「250%定率法」でしたが、税制改正で引き下げられました)。

途中から「改定取得価額 × 改定償却率」に切り替わる

定率法をそのまま続けると、償却費が毎年小さくなり、いつまでも償却が終わりません。そこで、計算した償却費(調整前償却額)が「償却保証額」を下回った年からは、計算方法が切り替わります。

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図2:200%定率法のしくみ。未償却残高×償却率で調整前償却額を求め、それが償却保証額(取得価額×保証率)以上ならそのまま償却費とし、下回った年からは改定取得価額×改定償却率に切り替えて以後は毎年同額で償却する判定フロー
図2:定率法(200%定率法)の計算のしくみ
  • 償却保証額 = 取得価額 × 保証率(耐用年数ごとに定められた率)
  • 調整前償却額が償却保証額を下回った年以後は、改定取得価額 × 改定償却率で計算し、以後は毎年同額になる
  • 改定取得価額 = 調整前償却額が初めて償却保証額を下回る年の期首未償却残高

この仕組みにより、耐用年数の終わりまでにきちんと償却しきれるようになっています。償却率・改定償却率・保証率は、耐用年数省令の別表第八〜十で定められています(国税庁 No.2106)。

例)取得価額1,000万円・耐用年数10年(償却率0.200・改定償却率0.250・保証率0.06552)の場合

償却保証額 = 1,000万円 × 0.06552 = 65万5,200円

期首帳簿価額 償却費 計算
1年目 10,000,000円 2,000,000円 10,000,000×0.200
2年目 8,000,000円 1,600,000円 8,000,000×0.200
3年目 6,400,000円 1,280,000円 6,400,000×0.200
6年目 3,276,800円 655,360円 3,276,800×0.200
7年目 2,621,440円 655,360円 ★改定取得価額2,621,440×0.250
655,360円 以後同額
10年目 655,360円 655,359円 残高1円まで

7年目の調整前償却額は 2,621,440×0.200=524,288円で、償却保証額65万5,200円を下回ります。そこで7年目からは改定取得価額2,621,440円×改定償却率0.250=65万5,360円で毎年同額を償却します(数値は国税庁 No.2106 の例に準拠。金額は例示です)。

初年度に200万円を費用化でき、定額法(100万円)の2倍を先に経費にできる点が定率法の特徴です。

定額法・定率法どちらを選ぶべきか

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図1:定額法と定率法の償却費イメージ。取得価額1,000万円・耐用年数10年で、定額法は毎年100万円で一定、定率法は初年度200万円から年々小さくなり途中から同額に落ち着く様子を年別の棒グラフで比較
図1:定額法と定率法の償却費イメージ(取得1,000万円・耐用10年。金額は例示)
項目 定額法 定率法
毎期の償却額 一定 初期が大きく、後期は小さい
帳簿管理 簡単 やや複雑(保証額の判定あり)
初期の節税効果 低い 高い
損益の安定性 高い 低い(初期に費用が集中)

初期に利益を圧縮して税負担を後ろ倒しにしたいなら定率法が有利です。ただし、償却は税金を「減らす」のではなく「先に計上する」だけで、資産全体で経費にできる総額は同じです。利益が少ない年に大きな償却費が乗ると赤字が膨らむこともあるため、利益計画と合わせて選びます。設備投資では、定率法に加えて特別償却や税額控除を使える「中小企業投資促進税制」も検討の余地があります。

なお、修理・改良の支出は、減価償却の対象になる「資本的支出」か、その期の経費になる「修繕費」かで扱いが分かれます。判定は「修繕費と資本的支出の違い」で整理しています。

資産の種類ごとの制限(建物は定額法のみ)

法人が選べる償却方法は、資産の種類によって制限があります。特に建物・建物附属設備・構築物は定額法しか使えません(取得時期に注意)。

資産の種類 定額法 定率法
建物(平成10年4月1日以後取得) ×
建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得) ×
機械・装置
車両・工具・器具備品

建物は平成10年4月1日以後取得分から、建物附属設備・構築物は平成28年4月1日以後取得分から、それぞれ定率法が廃止され定額法のみになりました(法人税法施行令48条の2)。それより前に取得した資産は、従来の方法を引き継ぎます。ソフトウェアなどの無形固定資産も定額法です(「ソフトウェアの減価償却」)。

償却方法の届出と変更

法人は、資産の種類ごとに使う償却方法を税務署に届け出ることができます。

  • 届出をしない場合:法定償却方法が適用されます。法人の法定償却方法は原則定率法です(ただし建物・建物附属設備・構築物や無形固定資産など、定額法しか選べない資産は定額法)。
  • 方法を変更する場合:変更しようとする事業年度の開始日の前日までに「減価償却資産の償却方法の変更承認申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。事業年度が始まってからでは間に合わない点に注意します。

古い資産は取得時期によって使う償却率が異なる(旧定率法・250%定率法・200%定率法)ため、既存資産を確認するときは取得年月をあわせて確認します。

まとめ

  • 定額法:取得価額 × 償却率で毎年同額。帳簿が単純で損益が安定する。
  • 定率法:未償却残高 × 償却率で初期に多く償却。ただし償却費が償却保証額を下回った年からは「改定取得価額 × 改定償却率」で毎年同額になる(200%定率法)。
  • 建物・建物附属設備・構築物は定額法のみ(取得時期の要件あり)。機械・車両などは選択できる。
  • 届出がなければ法人は原則定率法。方法の変更は事業年度開始日の前日までに申請する。
  • 償却は経費にできる総額が変わるわけではなく、計上のタイミングが変わる点を押さえて選ぶ。

監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報

本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。

最終更新日:2026.07.26 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・償却率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

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