修繕費と資本的支出の違いとは?20万円・60万円基準の判定フローをわかりやすく解説

修繕費と資本的支出の違いと判定フロー 経費・損金
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています
最終更新日:2026.07.12 / 令和7年4月1日現在の法令等に基づく(国税庁 No.5402・参照 2026.07)

建物の外壁を塗り直した、機械を修理した、事務所の内装を改修した――こうした支出で必ず問題になるのが、「一括で経費(修繕費)にできるのか、それとも資産計上して減価償却(資本的支出)なのか」という区分です。

修繕費なら支出した期に全額を損金にできますが、資本的支出とされると数年〜数十年かけて償却することになり、その期の税負担が大きく変わります。税務調査でも指摘されやすい定番の論点です。

この記事では、国税庁が示す判定基準(20万円未満・おおむね3年周期・60万円未満・前事業年度終了時の取得価額の10%)を判定フローの順に整理し、迷いやすい具体例もあわせて解説します。

免責: 本記事は記載時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。金額基準は形式的な目安であり、最終的には支出の実質で判定されます。個別の判断は税理士にご相談ください。

修繕費と資本的支出の違い

区分 内容 税務上の扱い
修繕費 固定資産の維持管理・原状回復のための支出 支出した期に全額損金
資本的支出 固定資産の使用可能期間を延長させ、または価値を増加させる支出 資産計上し、減価償却で費用化

たとえば300万円の改修費が修繕費なら当期に300万円全額が損金ですが、資本的支出(耐用年数15年の建物附属設備などを想定)とされれば、当期に損金になるのは償却費の数十万円程度にとどまります(実際の金額は償却方法や事業供用の月数で変わります)。区分ひとつで当期の課税所得が大きく変わりうる、ということです。

重要なのは、「修繕費」「改良費」といった名目や勘定科目では判定しないことです。国税庁も「修繕費、改良費などの名目によって判断するのではなく、その実質によって判定します」と明記しています(タックスアンサー No.5402)。

修繕費と資本的支出の対比図。修繕費は維持管理・原状回復で支出した期に全額損金、資本的支出は使用可能期間の延長・価値増加で資産計上して減価償却。判定は名目でなく実質で行う。
図:修繕費と資本的支出のちがい(税務上の扱いと具体例)

資本的支出になるもの|価値を高める・寿命を延ばす支出

次のような支出は、原則として修繕費にはならず資本的支出となります(No.5402)。

  1. 物理的に付け加えた部分の金額(例:建物の避難階段の取付け)
  2. 用途変更のための模様替えなど、改造・改装に直接要した金額(例:事務所を店舗に改装)
  3. 機械の部分品を特に品質・性能の高いものに取り替えた場合の、通常の取替えの金額を超える部分の金額

ポイントは3つ目です。壊れた部品を同等品に取り替えるだけなら修繕費ですが、より高性能なものに交換した場合は、「通常の取替えにかかったであろう金額」を超える部分だけが資本的支出になります。

修繕費になるもの|維持管理・原状回復

一方、固定資産の通常の維持管理のため、または毀損した資産の原状回復のために要した費用は修繕費となり、支出した期の損金になります。

  • 雨漏りの補修、壊れた設備の修理
  • 定期的なメンテナンス・部品交換
  • 災害で毀損した資産の原状回復費用(No.5402。被災前の効用を維持するための補強工事等も、法人が修繕費として経理していれば認められます)

実務の判定フロー|20万円・3年・60万円・10%基準

実際には「原状回復か価値増加か」の線引きが難しいケースが多いため、通達には形式的な判定基準が用意されています(No.5402、法人税基本通達7-8-1〜7-8-6)。実務では次の順で判定します。

金額基準の「単位」に注意: 金額基準は、請求書や支払回数ごとではなく、「一の計画に基づき同一の固定資産について行う修理・改良等」ごとに判定します。同じ計画の工事を複数の契約や請求書に分けても、原則として一体で判定します。なお、工事が複数の事業年度にわたる場合は、各事業年度に要した金額により判定します(No.5402、法人税基本通達7-8-3〜7-8-5)。

修繕費か資本的支出かの判定フロー。金額基準は一の計画に基づき同一資産について行う修理・改良ごとに判定。STEP1は20万円未満か、STEP2はおおむね3年周期か、STEP3は明らかに資本的支出か、STEP4は明らかな分を区分した後の不明な金額が60万円未満または前事業年度終了時の取得価額の10%以下か(取得価額であり帳簿価額ではない)、STEP5は継続適用による区分。STEP1・STEP2・STEP4はSTEP5より優先。増築・新設など新たな資産の取得は判定対象外。
図:実務の判定フロー(STEP1〜STEP5)
STEP1:一つの修理・改良の金額が20万円未満か?
→ 一の修理・改良等に該当するものであれば、資本的支出に当たる内容でも修繕費にできる
STEP2:おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良か?
→ 既往の実績その他の事情から周期的な修理・改良と明らかなら修繕費にできる
STEP3:明らかに資本的支出(価値増加・耐久性向上)に当たるか?
→ 当たるなら資本的支出
STEP4:明らかな修繕費・明らかな資本的支出を区分した後も判定が明らかでない金額について、①その金額が60万円未満、または②その固定資産の前事業年度終了の時における取得価額のおおむね10%相当額以下か?
→ どちらかを満たせば修繕費にできる

STEP4の「10%」は取得価額であって帳簿価額ではない: ここでいう取得価額は、原則として税務上の取得価額であり、減価償却後の帳簿価額・未償却残高ではありません(No.5402では「前事業年度終了の時における取得価額」と定められています。過去に資本的支出がある場合はその金額も含めた取得価額で判定します〈法人税基本通達7-8-4注1・注2〉)。また、STEP4はあくまで明らかな修繕費部分・明らかな資本的支出部分を区分した後に残る、区分が不明な金額に適用するもので、工事総額に機械的に当てはめるものではありません。

STEP5:それでも明らかでない場合(継続適用による区分)
→ 法人が継続して、「支出額の30%相当額」と「前事業年度終了の時における取得価額の10%相当額」のいずれか少ない金額を修繕費とし、残額を資本的支出とする処理をしているときは、その処理が認められる。

なお国税庁 No.5402では、STEP5の継続適用基準よりも、STEP1(20万円未満)・STEP2(おおむね3年周期)・STEP4①(60万円未満等)の取扱いが優先して適用されるとされています。実務ではSTEP1から順に確認してください。

※これらの金額基準は「修繕費とすることができる」という取扱いであり、絶対的な基準ではありません。20万円未満・おおむね3年周期の基準は、少額または周期の短い修理・改良について修繕費処理を認める取扱いです。一方、60万円未満・取得価額10%以下の基準は、修繕費か資本的支出かが明らかでない場合の判定基準です。ただし、20万円未満・おおむね3年周期の基準は、既存の固定資産について行う「一の修理・改良等」を対象とする取扱いです。増築・新設や、既存資産の復旧に代えて別の資産を取得する場合など、新たな資産の取得に当たるものには適用されません。

迷いやすい具体例

外壁塗装は修繕費になる?

既存の塗装の塗り替え(現状維持・原状回復目的)は一般に修繕費と考えられます。ただし、より高級・高性能な塗装への変更や、あわせて行う改修の内容によっては資本的支出となる部分が生じます。外壁塗装でも、防水性能を大きく高める工事、断熱性能を付加する工事などは、単なる塗り替えではなく資本的支出と判断される余地があります。なお、外壁材そのものの張替えを伴う場合でも、一律に資本的支出となるわけではなく、従前と同等の材質・機能への原状回復か、性能向上を伴う改良かによって判断します。見積書では「塗装」「下地補修」「防水工事」「外壁材交換」などの内訳を分けて確認することが重要です。

LED照明への交換は修繕費になる?

国税庁の質疑応答事例では、事務室の蛍光灯を蛍光灯型LEDランプに取り替えた費用は、蛍光灯型LEDランプが照明設備(建物附属設備)の本来の効用を発揮するための一の部品にとどまり、部品の性能が高まっても建物附属設備としての価値等が高まったとまではいえないとして、修繕費として処理して差し支えないとされています(照明設備自体の工事を伴わない前提)。ただし、照明設備そのもの(配線・器具一式)を新しく敷設し直す場合は資産の取得になりえます。

災害復旧工事の取扱い

被災資産の原状回復費用は修繕費です。修繕費か資本的支出か明らかでない金額は、法人がその金額の30%を修繕費・残額を資本的支出とする経理を行っている場合、その処理が認められます(No.5402)。ただし、被災資産の復旧に代えて新規に資産を取得する場合は新たな資産の取得となり、修繕費にはできません。

資本的支出とした場合の減価償却

税務上は原則として、資本的支出額を固有の取得価額とし、その支出の対象となった資産(旧減価償却資産)と種類・耐用年数を同じくする減価償却資産を新たに取得したもの(別個の「追加償却資産」)として減価償却します。旧資産は従来の償却方法を継続します(タックスアンサー No.5405)。なお、旧資産の取得時期や償却方法によっては、旧資産の取得価額へ加算する、あるいは旧資産や他の追加償却資産と合算して償却できる特例もあります(平成19年3月31日以前に取得した資産、一定の定率法適用資産など)。

資本的支出後の減価償却の考え方。原則は、旧資産とは別個に、旧資産と種類・耐用年数を同じくする別個の追加償却資産を取得したものとして償却計算し、旧資産は従来どおり。旧資産の取得時期や償却方法によっては、旧資産や他の追加償却資産と合算して償却できる特例もある。
図:資本的支出とした後の減価償却の考え方

減価償却の方法(定額法・定率法)については、関連記事で詳しく解説しています(「次に読む」を参照)。

まとめ

  • 修繕費は支出した期に全額損金、資本的支出は資産計上して減価償却。区分は名目でなく実質で判定する。
  • まず「20万円未満」「おおむね3年周期」なら修繕費にできる。明らかな価値増加・耐久性向上は資本的支出。
  • 区分が明らかでないときは「60万円未満」または「前事業年度終了時の取得価額の10%以下」なら修繕費にできる。最後の手段として、継続適用による区分(支出額の30%と前事業年度終了時取得価額の10%のいずれか少ない金額を修繕費とする方法)がある。
  • 金額基準はあくまで「できる」規定。「20万円未満・おおむね3年周期」は、一の修理・改良等に当たる限り、価値増加等が認められる場合でも修繕費処理を認める取扱い。一方、「60万円未満・取得価額10%以下」は、修繕費か資本的支出かが明らかでない金額に限られる。なお、増築や新設など新たな資産の取得は、そもそもこれらの判定対象外。迷ったら税理士に相談を。

根拠・参考(一次情報)

監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.12 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。
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