会社を運営していると、法人税や住民税だけでなく、事業税・固定資産税・印紙税・自動車税など、実にさまざまな「税金」や「公課」を負担します。ただし、これらの会計上の処理科目は税目によって異なり、法人税など所得を基礎として課される税金は損益計算書上「法人税等」などで表示し、固定資産税・印紙税・自動車税などは租税公課という勘定科目で処理するのが一般的です。そのうえで経理担当者にとって悩ましいのは「支払った税金はすべて経費(損金)になるのか?」という点です。
この記事の主題は、会計上どの科目で処理するかよりも、法人税の計算上、その税金が損金に算入されるかどうかにあります。冒頭で会計上の科目と法人税上の損金算入を分けて押さえておきましょう。
結論からいうと、租税公課には「損金になるもの」と「損金にならないもの」があり、さらに損金になるものについては「いつの事業年度の損金にするか(損金算入時期)」というルールがあります。ここを取り違えると、法人税の申告で所得金額を誤り、修正申告や加算税につながることもあります。
この記事では、国税庁タックスアンサーNo.5300を一次情報として、①損金になる/ならない租税公課の区分、②なぜ法人税・住民税や罰金・加算税は損金不算入なのか、③損金算入の時期の3つの考え方を、中小企業の経営者・経理担当者向けにやさしく整理します。
免責: 本記事は一般的な解説であり、記載時点の制度に基づく概要です。租税公課の区分や算入時期は個々の税目・経理方式・自治体の取扱いによって異なる場合があります。個別の判断は税理士にご相談ください。
1. 租税公課とは
租税公課とは、国や地方公共団体に納める「租税(税金)」と、国・地方公共団体や公共的な団体などに納める手数料・負担金・会費などの「公課」をあわせた会計上の科目です。なお、罰金や過料を会計上「租税公課」で処理することがありますが、法人税上は原則として損金不算入です(後述)。具体的には、次のようなものが含まれます。
- 租税:事業税、固定資産税、都市計画税、自動車税、印紙税、登録免許税、不動産取得税 など
- 公課:登記事項証明書・印鑑証明書などの発行手数料、商工会議所の会費、同業者組合の組合費、一定の負担金 など
法人が納付するこれらの租税公課は、法人税法上、原則として損金の額に算入されます。ただし、法人税や住民税など「損金に算入されない」と法律で定められているものが例外的に存在する、という構造で理解するのが正確です(損金不算入となるものの範囲と、損金算入時期は国税庁タックスアンサーNo.5300/令和7年4月1日現在法令等で確認できます)。
なお、法人税や消費税など税目ごとの詳しい扱いは、会社が採用する会計処理(後述の税込経理/税抜経理など)によっても変わる点に注意してください。
2. 損金になる租税公課
損金に算入される代表的な租税公課には、次のようなものがあります(参照 2026.07)。
| 税目・公課 | 主な内容 |
|---|---|
| 事業税・特別法人事業税 | 所得等に応じて課される地方税。原則として損金算入(時期に特例あり/後述) |
| 固定資産税・都市計画税 | 土地・建物・償却資産にかかる地方税 |
| 自動車税(種別割)・自動車重量税 | 事業用車両にかかる税 |
| 不動産取得税・登録免許税 | 資産取得時にかかる税(取得価額に含める場合を除く) |
| 印紙税 | 契約書・領収書などに貼付する収入印紙 |
| 事業所税 | 一定規模以上の事業者にかかる地方税 |
| 消費税・地方消費税 | 一体で課税。損金の扱いは経理方式(税込/税抜)による(後述) |
| 公共的な会費・組合費・手数料 | 商工会議所会費、証明書発行手数料など |
このほか、利子税や、地方税の延滞金のうち「納期限の延長に係る延滞金」は損金に算入できるとされています(No.5300原文のカッコ書き)。これらは、罰則的な延滞税・延滞金とは性質が異なる例外的な取扱いで、損金算入時期についても法人税基本通達9-5-1に定めがあります。
消費税については、会社が税込経理を採用している場合、納付する消費税額は租税公課として損金に算入されます。一方、税抜経理の場合は、預かった消費税と支払った消費税を差額で精算するため、原則として損益に影響しません。どちらの方式かで見え方が変わる点だけ押さえておきましょう(詳細は深入りしません)。
3. 損金にならない租税公課
一方、次のものは法人税法上、損金の額に算入されません。国税庁タックスアンサーNo.5300(令和7年4月1日現在法令等)は、損金不算入となる主な租税公課等として次を挙げています。
- 法人税、地方法人税、都道府県民税および市町村民税の本税
- 各種加算税および各種加算金、延滞税および延滞金(地方税の納期限の延長に係る延滞金は除く)ならびに過怠税
- 罰金および科料(外国またはその地方公共団体が課すこれらに相当するものを含む)ならびに過料
- 法人税額から控除する所得税、復興特別所得税および外国法人税
つまり、「本税としての法人税・住民税」と、「延滞税・加算税・罰金など罰則的・附帯的な負担」、そして「税額控除で精算する所得税・外国法人税」が損金不算入の中心です。
なお、事業税(特別法人事業税を含む)は住民税とは異なり損金になる税金です。「地方税だから不算入」ではなく、税目ごとに区分されている点に注意してください。
4. なぜ損金不算入なのか
損金にならない理由は、税目のグループごとに考え方が分かれます。
(1)法人税・住民税の本税
法人税・地方法人税・住民税は、そもそも「所得(もうけ)に対して課される税金」です。これらを損金に入れて所得を圧縮すると、税額計算が循環してしまい、課税の公平が保てません。そのため法人税法第38条(法人税額等の損金不算入)により、損金に算入しないこととされています。
(2)加算税・延滞税・罰金・過料など
これらは、申告や納付の義務を怠ったこと、あるいは法令違反に対する制裁(ペナルティ)としての性質を持ちます。制裁的な支出を損金に認めて税負担を軽くすると、制裁の効果が薄れてしまいます。そこで法人税法第55条(不正行為等に係る費用等・罰科金等の損金不算入)などにより、損金不算入とされています。
(3)法人税額から控除する所得税・外国法人税
これらは、支払時に源泉徴収された所得税や海外で課された税を、日本の法人税額から差し引いて二重課税を調整する(税額控除する)ためのものです。法人税額から控除する所得税・復興特別所得税や、外国税額控除の適用を受ける外国法人税は、税額控除と損金算入を重ねて受けることを防ぐため、損金不算入となります。なお、所得税等について税額控除を受けない場合は、損金に算入されます(外国法人税も外国税額控除との選択関係があります)。
5. 損金算入の時期
損金になる租税公課であっても、「どの事業年度の損金にするか」は税金の課され方によって異なります。国税庁タックスアンサーNo.5300は、次の3方式で整理しています(参照 2026.07)。
(1)申告納税方式(例:事業税、酒税など、自ら申告して納める税)
→ 原則として、納税申告書を提出した事業年度の損金になります(更正・決定があった場合はその事業年度)。
(2)賦課課税方式(例:固定資産税、都市計画税、自動車税、不動産取得税など、自治体が税額を通知する税)
→ 原則は賦課決定のあった事業年度の損金ですが、実務上は「各納期の開始日」または「実際に納付した日」の属する事業年度に損金経理する方法も認められ、いずれかを継続して適用します。
(3)特別徴収方式(例:ゴルフ場利用税、軽油引取税など、事業者が徴収して納める税)
→ 原則として、納入申告書を提出した事業年度の損金になります(更正・決定があった場合はその事業年度)。
事業税・特別法人事業税の時期に注意
申告納税方式のうち、事業税・特別法人事業税は特に注意が必要です。これらは原則として申告書を提出した日の属する事業年度の損金となるため、通常は「翌期」の損金になります(法人税基本通達9-5-1)。
ただし、直前年度分の事業税については、事業年度末までに申告がされていなくても当期の損金に算入できる特例(法人税基本通達9-5-2)があります。例えば3月決算法人の場合、前期分の事業税は原則として申告書を提出する当期の損金になりますが、申告期限の延長などにより当期末までに前期分の申告が済んでいない場合でも、一定の見積額を当期の損金に算入できるのがこの特例です(当期分の事業税を見積計上できる特例ではない点に注意)。決算・申告の実務では、この時期のズレが所得金額に影響するため、必ず確認しておきたいポイントです。
まとめ
租税公課は「原則損金・例外不算入」という構造で押さえるのが近道です。最後に早見表で整理します(参照 2026.07・No.5300ほかによる)。
損金になる/ならない租税公課 早見表
| 区分 | 代表例 |
|---|---|
| 損金になる | 事業税・特別法人事業税、固定資産税・都市計画税、自動車税・自動車重量税、印紙税、登録免許税、不動産取得税、事業所税、消費税・地方消費税(税込経理)、利子税、地方税の納期限延長に係る延滞金、公共的な会費・手数料 など |
| 損金にならない | 法人税・地方法人税の本税、都道府県民税・市町村民税の本税、延滞税・延滞金(納期限延長分を除く)、各種加算税・加算金、過怠税、罰金・科料・過料、法人税額から控除する所得税・復興特別所得税・外国法人税 |
損金算入時期の早見表
| 課税方式 | 原則の損金算入時期 |
|---|---|
| 申告納税方式 | 納税申告書を提出した事業年度(事業税等は原則「翌期」/特例あり) |
| 賦課課税方式 | 賦課決定のあった事業年度(納期開始日・納付日を継続適用も可) |
| 特別徴収方式 | 納入申告書を提出した事業年度 |
区分や時期の判断に迷う場合や、加算税・延滞金が生じているケースでは、自己判断せず税理士に確認することをおすすめします。
根拠・参考(一次情報)
- 国税庁 タックスアンサー No.5300「損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期」(令和7年4月1日現在法令等)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5300.htm - e-Gov法令検索 法人税法第38条(法人税額等の損金不算入)
https://laws.e-gov.go.jp/ - e-Gov法令検索 法人税法第55条(不正行為等に係る費用等の損金不算入)
https://laws.e-gov.go.jp/ - 法人税基本通達9-5-1(租税の損金算入の時期)/9-5-2(事業税及び特別法人事業税の損金算入の時期の特例)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_05_01.htm
監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.12 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者
本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

