国庫補助金の圧縮記帳とは|計算例でわかる補助金の課税繰延

減価償却・設備投資
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

ものづくり補助金や事業再構築補助金などを活用して機械や設備を購入した会社は多いでしょう。ここで見落としがちなのが、受け取った補助金は「受贈益」として、その事業年度の課税所得に含まれるということです。1,000万円の補助金なら、そのままではその1,000万円が丸ごと所得を押し上げ、法人税の負担が生じます。せっかくの補助金が税金で目減りしてしまうのです。

これを避けるための制度が国庫補助金等の圧縮記帳です。補助金で取得した固定資産の帳簿価額を圧縮することで、補助金への課税を将来に繰り延べられます。この記事では、要件と圧縮限度額のしくみを、具体的な数字を使った計算例で解説します。

免責: 本記事は記載時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。適用要件や限度額は個別事情・改正で変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。

補助金はそのままだと課税される

法人が国や地方公共団体などから受け取った補助金・助成金(国庫補助金等)は、原則として受贈益(益金)となり、課税所得に含まれます。補助金は返済不要のお金なので、税務上は「もうけ」と同じ扱いになるためです。

補助金で固定資産を買った場合、その資産の取得価額をもとに減価償却をしていくため、費用は何年もかけて少しずつ計上されます。一方、補助金は受け取った年に一度に益金となるため、取得初年度に税負担が集中してしまいます。この「収入は一括・費用は分割」というズレを調整するのが圧縮記帳です。

国庫補助金等の圧縮記帳の要件

国庫補助金等の圧縮記帳を使うには、主に次の要件を満たす必要があります(法人税法42条、法人税基本通達 第10章第2節)。

  • その事業年度終了の時までに、補助金の返還を要しないことが確定していること。
  • 交付の目的に適合した固定資産を取得または改良していること。
  • 取得資産の帳簿価額を圧縮限度額の範囲内で損金経理により減額する、または積立金として積み立てる経理をしていること。
  • 確定申告書に圧縮額の損金算入に関する明細書(別表13(1))を添付すること。

補助金の返還不要が事業年度末までに確定していない場合は、いったん特別勘定として経理し(法人税法43条)、返還不要が確定した事業年度に圧縮記帳へ振り替えます(法人税法44条)。

なお、補助金の交付条件として「目的外使用をした場合は返還」「一定期間内に相当の収益が生じた場合は返還」といった一般的な条件が付されていても、それだけで直ちに返還不要が確定していないとは扱われません。実務上は、補助金額の確定通知を受けた時期などを確認します。補助金適正化法(補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律)15条により交付すべき補助金額が確定し、その通知を受けたものは、返還不要が確定した国庫補助金等に該当します(法人税基本通達10-2-1)。

なお、補助金が国や地方公共団体から団体などを経由して間接的に交付される場合でも、実質的に国等から直接交付を受けたと認められるときは、国庫補助金等の圧縮記帳の対象になり得ます(国税庁 質疑応答事例)。間接交付の場合は、たとえば次のような点を確認します。

  • 補助金の財源が国または地方公共団体であるか
  • 交付団体(事務局・協会・基金など)に独自の裁量があるか
  • 国等の監督のもとで交付されているか
  • 国等から交付された補助金が遅滞なく対象法人へ交付される仕組みか

圧縮限度額の計算

国庫補助金等の圧縮記帳の圧縮限度額は、原則として、その固定資産の取得または改良に充てた国庫補助金等の額です(返還を要しないことが確定したもの。取得価額が上限)。

つまり、「補助金でまかなった部分」の金額を圧縮損として損金にできる、というシンプルな考え方です。受け取った補助金(受贈益)と同額の圧縮損が立つことで、取得年の課税所得への影響が相殺されます。

具体的な計算例

次のモデルケースで、圧縮記帳を使う場合と使わない場合を比べてみます。本例は制度のしくみを示すための作例(モデルケース)であり、国税庁が公表する特定の計算例ではありません。

  • 国庫補助金:500万円(当期に返還不要が確定)
  • 補助金で取得した機械:1,500万円(耐用年数5年・定額法・償却率0.200)
  • わかりやすさのため、期首に取得・事業供用したものとします。

① 圧縮記帳をしない場合

受贈益500万円がそのまま益金になります。機械の減価償却費は「1,500万円 × 0.200 = 300万円」。補助金500万円に対して当期の償却費は300万円しかないため、差額の200万円分だけ当期の所得が押し上げられ、課税が先行します。

② 圧縮記帳をする場合

圧縮限度額は、取得に充てた補助金の額=500万円です。仕訳は、資産の帳簿価額を直接減らす直接減額方式では次のようになります。

取引 借方 貸方
補助金の受取 現金預金 500万円 国庫補助金受贈益 500万円
機械の取得 機械装置 1,500万円 現金預金 1,500万円
圧縮記帳 固定資産圧縮損 500万円 機械装置 500万円
当期の減価償却 減価償却費 200万円 減価償却累計額 200万円
  • 圧縮損(損金)500万円を計上し、機械の帳簿価額を「1,500万円 − 500万円 = 1,000万円」に減額します。
  • 受贈益500万円(益金)と圧縮損500万円(損金)が相殺され、補助金部分への課税は生じません
  • 減価償却費は、圧縮後の1,000万円をもとに「1,000万円 × 0.200 = 200万円」となります。

圧縮しない場合の償却費300万円に対し、圧縮後は200万円。毎年100万円ずつ償却費が小さくなるため、そのぶん将来の所得(=税金)が増えます。つまり圧縮記帳は税金を免除するのではなく、将来に繰り延べているわけです。それでも、補助金を受け取った年の資金流出(納税)を抑えられる点に意味があります。

経理方法と注意点

圧縮記帳の経理には、資産の帳簿価額を直接減らす直接減額方式と、利益処分で積立金として積み立てる方式があります。どちらでも損金算入の効果は得られますが、財務諸表の見え方や税務調整の手間が異なります。

また、補助金を受け取る前に資産を先行取得している場合や、期末までに返還不要が確定していない場合は、特別勘定を用いるなど扱いが変わります。さらに、圧縮記帳をした資産は、中小企業投資促進税制などの特別償却・税額控除と重複して適用できないことがあります。適用にあたっては税理士に確認することをおすすめします。

また、地方公共団体から交付される補助金・奨励金であっても、実質的に地方税の減免に代えて交付されたものと認められる場合は、国庫補助金等の圧縮記帳の対象にならないことがあります(法人税基本通達10-2-4)。

まとめ

  • 受け取った補助金は原則として受贈益(益金)として課税される。圧縮記帳はその課税を将来に繰り延べる制度(法人税法42条)。
  • 要件は、返還不要が事業年度末までに確定・目的に適合した固定資産の取得・経理・別表13(1)の添付など。
  • 圧縮限度額は、原則として取得・改良に充てた補助金の額(取得価額が上限)。
  • 計算例:補助金500万円・機械1,500万円なら、圧縮損500万円で簿価1,000万円。受贈益と相殺され補助金部分への課税なし。期首取得なら償却は当期から、以後の償却費は年200万円に減る。
  • 圧縮記帳は「免除」ではなく「繰延べ」。特別償却・税額控除との重複適用制限に注意。圧縮記帳の全体像は圧縮記帳とはで整理しています。

根拠・参考(一次情報)

  1. 国税庁 法人税基本通達 第10章第2節「国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳」(通達10-2-1が根拠条文として法法42条1項・43条1項・44条1項を明示)
    https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/10/10_02.htm
  2. 国税庁 質疑応答事例「間接交付された国又は地方公共団体の補助金で取得した固定資産の圧縮記帳の適用について」
    https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/07/11.htm
  3. 根拠法令:法人税法42条(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)・43条(特別勘定)・44条(返還不要確定時)ほか(e-Gov法令検索で確認)

監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報

本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。

最終更新日:2026.07.06 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。

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