中小企業投資促進税制とは|特別償却30%・税額控除7%

減価償却・設備投資
税理士が執筆・監修
条文と実務経験にもとづき、最新の税制改正を反映して解説しています

機械や工具、ソフトウェア、貨物運送用のトラックなど、事業のための設備を買ったとき、中小企業には通常の減価償却に上乗せして早く費用にできる、あるいは法人税額から直接差し引けるという優遇があります。それが中小企業投資促進税制(租税特別措置法42条の6)です。

この制度では、対象資産について基準取得価額の30%の特別償却か、基準取得価額の7%の税額控除のどちらかを選べます(基準取得価額は、船舶は取得価額の75%、その他の資産は取得価額そのものです)。設備投資の意思決定や決算前の節税判断に効く制度ですが、対象になる法人・資産・事業や、税額控除を使える会社の条件などに細かい要件があります。とくに、期限内に取得(購入・製作)しただけでは適用できず、原則として期限内に対象事業で実際に使い始める(事業の用に供する)必要があります。この記事では、国税庁の一次情報にもとづいて要点を整理します。

免責: 本記事は記載時点の法令・通達に基づく一般的な解説です。適用要件や期限は個別事情・改正で変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。

中小企業投資促進税制とは

中小企業投資促進税制は、青色申告書を提出する中小企業者などが、指定期間内に新品の機械装置などを取得して、製造業・建設業などの指定事業の用に供した場合に、その事業年度で特別償却または税額控除を認める制度です(国税庁 No.5433)。

指定期間は、平成10年6月1日から令和9年3月31日までとされています(No.5433、令和7年4月1日現在法令等。※期限は税制改正で延長されうるため、適用時には最新の国税庁情報で再確認してください)。中古資産や貸付けの用に供する資産は原則として対象外である点に注意が必要です。

なお、所有権移転外リース取引で賃借人が取得したものとされる資産については、特別償却は適用できませんが、税額控除は適用できます(No.5433)。

対象になる法人・資産・事業

対象法人は、青色申告書を提出する中小企業者などです。中小企業者とは、原則として資本金1億円以下の法人などをいいますが、大規模法人に一定割合以上を保有されている法人や、その事業年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える適用除外事業者は対象から除かれます(No.5433)。

対象資産(特定機械装置等)は、新品で、次のような取得価額の下限を満たすものです(No.5433)。

資産の種類 取得価額などの要件
機械および装置 1台または1基が160万円以上
測定工具・検査工具 1台または1基が120万円以上(1台または1基が40万円以上かつその事業年度の合計120万円以上を含む)
ソフトウェア(一定のもの) 一のソフトウェアが70万円以上(その事業年度の合計70万円以上を含む)。ただし複写して販売するための原本、開発研究の用に供するもの、サーバー用OS等の一定のものは対象外
貨物自動車 貨物運送用で車両総重量3.5トン以上の一定の普通自動車
内航海運業の船舶 対象(総トン数500トン以上の船舶は、環境負荷の低減に資する設備の設置状況等を国土交通大臣に届け出たものに限る)。基準取得価額は取得価額の75%

測定・検査工具の合計判定の下限について: 国税庁タックスアンサー No.5433 は更新前の「30万円以上」で表示されていますが、令和8年度税制改正後の現行基準は40万円以上(かつ合計120万円以上)です(租税特別措置法施行令27条の6)。適用時は最新の一次情報でご確認ください。

指定事業は、製造業、建設業、卸売業、小売業、道路貨物運送業、情報通信業、宿泊業、飲食店業(料亭・バー・キャバレー・ナイトクラブ等は、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る)など幅広く含まれます。一方で、娯楽業(映画業を除く)や性風俗関連特殊営業は対象になりません。

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図1:中小企業投資促進税制の対象になる資産(特定機械装置等・新品)
図1:中小企業投資促進税制の対象になる資産(特定機械装置等・新品)

特別償却30%と税額控除7%の選び方

対象になる場合、次のどちらかを選択します(いずれも基数は「基準取得価額」で、多くの資産では取得価額と同じ、船舶は取得価額の75%です)。

特別償却(基準取得価額の30%)は、通常の減価償却費に加えて、初年度に基準取得価額の30%を上乗せして償却できます。早期に費用計上でき、その年の所得を圧縮できますが、あくまで償却の前倒しであり、トータルの償却額(費用の総額)が増えるわけではありません。

税額控除(基準取得価額の7%)は、法人税額そのものから直接差し引ける制度です。費用の前倒しではなく税額が減るため、条件によっては長期的な負担軽減の効果が大きくなりやすい一方、次の条件があります。

  • 税額控除を使えるのは、中小企業者などのうち資本金3,000万円以下の法人等に限られます(No.5433)。資本金3,000万円超1億円以下の中小企業者は、特別償却のみ選択できます。
  • 税額控除の上限は、その事業年度の調整前法人税額の20%相当額です(この制度の税額控除と、中小企業経営強化税制(措法42の12の4)の税額控除との合計での上限)。上限を超えて控除しきれなかった額は、1年間の繰越しができます(No.5433)。

なお、同じ資産について特別償却と税額控除を両方使うことはできません。また、租税特別措置法上の圧縮記帳や他の特別償却・税額控除との重複適用も認められません(No.5433)。

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図2:特別償却30%と税額控除7%の選び方
図2:特別償却30%と税額控除7%の選び方

適用期限と手続き

特別償却の適用を受けるには、確定申告書等に償却限度額の計算に関する明細書を添付して申告する必要があります。税額控除の場合は、控除を受ける金額を確定申告書等に記載し、その計算に関する明細書を添付します(No.5433)。特別償却については、適用に代えて特別償却準備金として積み立てて損金算入する方法も認められています。

適用期限は前述のとおり令和9年3月31日までですが、これまで数次にわたり延長されてきた経緯があります。設備の取得時期が期限をまたぐ場合は、取得日と事業供用日が指定期間内かどうかを、最新の国税庁情報で確認してください。

経営強化税制(No.5434)との違い

似た制度に中小企業経営強化税制(No.5434、措法42の12の4)があります。こちらは、中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた設備について、即時償却(取得価額から普通償却限度額を控除した残額を初年度に償却=実質的に全額を初年度に費用化)または税額控除10%(資本金3,000万円超の中小企業者等は7%)を選べる、より効果の大きい制度です(この即時償却・10%/7%は機械装置・器具備品等の場合の扱いで、令和7年度に整備されたE類型で対象になった建物・附属設備などは特別償却率・税額控除率が異なります。詳細は最新のNo.5434・中小企業庁の手引きをご確認ください)。

投資促進税制(30%特別償却・7%税額控除)は認定計画が不要で使いやすい一方、経営強化税制は事前の計画認定という手続きが必要になります。設備投資の規模や準備できる時間に応じて、どちらの制度が使えるか・有利かを検討することになります。なお、両制度の税額控除には、合計で調整前法人税額の20%という共通の上限があります(No.5433・No.5434)。

また、経営強化税制のE類型を利用する場合は、その投資計画の期間中は中小企業投資促進税制を利用できません。E類型を検討している場合は、設備の取得前に、どの制度を適用するかを整理しておく必要があります。

まとめ

  • 中小企業投資促進税制は、青色申告の中小企業者等が新品の機械等を取得したときに、基準取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除を選べる制度(措法42の6、No.5433)。
  • 対象は機械装置160万円以上、測定検査工具120万円以上、ソフトウェア70万円以上、車両総重量3.5トン以上の貨物自動車など。中古資産・原則として貸付用の資産は対象外。
  • 税額控除は資本金3,000万円以下の中小企業者等が対象。控除上限は調整前法人税額の20%(経営強化税制と合算)、超過額は1年繰越。
  • 適用期限は令和9年3月31日まで(改正で延長されうるため要確認)。同一資産での特別償却と税額控除の重複はできない。
  • 経営力向上計画の認定を受ければ、より効果の大きい中小企業経営強化税制(即時償却・最大10%税額控除)も選択肢になる。

根拠・参考(一次情報)

監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.25 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者

本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・税率に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。
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