会社が赤字になった年の損失(欠損金)は、その年だけで消えてしまうわけではありません。法人税には欠損金の繰越控除という制度があり、赤字を翌年以降に持ち越して、黒字が出た年の所得から差し引くことができます。これにより、黒字の年の法人税を軽くできます。
ただし、繰り越せる期間や、一度に差し引ける限度、そのための申告の要件にはルールがあります。この記事では、それらを国税庁の一次情報にもとづいて整理します。
免責: 本記事は記載時点の法令にもとづく一般的な解説です。要件・限度は改正で変わります。個別の判断は税理士にご相談ください。
欠損金の繰越控除とは
欠損金の繰越控除とは、ある事業年度に生じた欠損金(税務上の赤字)を、翌事業年度以降に繰り越して、黒字の年の所得金額から差し引ける制度です(法人税法57条)。差し引いた分だけその年の課税所得が減り、法人税が軽くなります。
たとえば前期が500万円の赤字(欠損金)、今期が800万円の黒字なら、今期の所得800万円から前期の欠損金500万円を差し引き、課税所得を300万円に圧縮できます。
繰り越せる期間は最長10年
繰越控除ができる期間は、欠損金が生じた事業年度の開始日前10年以内です。つまり、その年の欠損金は最長10年間繰り越せます。
- 10年:平成30年4月1日以後に開始した事業年度で生じた欠損金
- 9年:それより前(平成30年4月1日前)に開始した事業年度で生じた欠損金
古い制度で生じた欠損金には9年の期間が残るため、古い赤字を管理するときは発生年度を確認します。
なお、繰越欠損金が複数年度分あるときは、最も古い事業年度に生じたものから順に差し引きます。
適用の要件:欠損金が出た年に「青色申告」
繰越控除を受けるには、次の申告の要件を満たす必要があります。
- 欠損金が生じた事業年度に、青色申告書である確定申告書を提出していること
- かつ、その後の各事業年度について、連続して確定申告書を提出していること
ポイントは、赤字の年に青色申告をしていることです。欠損金が生じた年さえ青色申告であれば、その後の年の申告が白色申告であっても、その欠損金の繰越控除は認められます。青色申告そのものの要件やメリットは「法人の青色申告とは」で解説しています。
控除限度:中小法人は100%、大法人は50%
繰り越した欠損金を黒字の年に差し引くとき、一度に差し引ける限度は法人の規模によって異なります。ここが実務で最も差が出るポイントです。
- 中小法人等:繰越控除前の所得金額の100%まで控除できます(黒字を欠損金で全額相殺できる)。
- 中小法人等以外(大法人):繰越控除前の所得金額の50%が限度です(残り50%には課税される)。
この50%という限度は平成30年4月1日以後に開始する事業年度のもので、それ以前は80%→65%→60%→55%と段階的に引き下げられてきました。
ここでいう中小法人等とは、資本金の額(出資金の額)が1億円以下の普通法人などをいいます。ただし、資本金5億円以上の大法人の100%子会社など(100パーセント子法人等)や大通算法人は、資本金が1億円以下でも中小法人等から除かれ、50%限度の対象になります。中小法人の資本金1億円という区分は「法人税の税率と実効税率」でも使われる重要なラインです。
数値例で見る(すべて「例」)
繰越控除前の所得金額が1,000万円、前期から繰り越した欠損金が1,000万円のケースを考えます(金額はすべて例です)。
| 中小法人等(100%) | 大法人(50%) | |
|---|---|---|
| 控除前の所得 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 控除限度 | 1,000万円(所得の100%) | 500万円(所得の50%) |
| 差し引ける欠損金 | 1,000万円 | 500万円 |
| 課税所得 | 0円 | 500万円 |
| 翌期以降に残る欠損金 | 0円 | 500万円 |
同じ黒字・同じ繰越欠損金でも、中小法人は全額を相殺して課税所得を0にできるのに対し、大法人は半分までしか使えず、残りは翌期以降に繰り越します(差し引いた後の所得に法人税がかかります。計算の流れは「法人税の計算方法」を参照)。
まとめ
- 欠損金の繰越控除は、赤字(欠損金)を繰り越して黒字の年の所得から差し引ける制度(法人税法57条)。
- 繰越期間は最長10年(平成30年4月1日前開始の事業年度分は9年)。古い欠損金から順に差し引く。
- 要件は、欠損金が生じた年に青色申告書を提出し、その後連続して申告していること。
- 控除限度は、中小法人等は所得の100%/大法人は50%。中小でも大法人の100%子会社等は50%限度。
- 前期の黒字に繰り戻して法人税の還付を受ける「繰戻し還付」(No.5763)という別制度もあり、中小等では繰越と選択できる。
- 判定は資本区分などで分かれるため、実際の申告は税理士と確認するのが安心。
監修:税夢(税理士・税理士法人勤務)/ 運営者・監修者情報
本記事は、国税庁タックスアンサー・e-Gov法令検索等の一次情報と照合したうえで、税理士の監修のもとに公開しています。
最終更新日:2026.07.28 対象読者:中小企業の経営者・経理担当者
本記事は一般的な解説で、記載時点の制度・要件に基づきます。監修者個人の見解であり、所属する税理士法人の公式見解ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。



